HOME > ESSAY > TECHNIQUES

「ドッジ」から脱出しよう!(Getting out of Dodge!)

Tyl HP Counseling Insights October 31, 2007


***外国人読者向けの注意:「Get out of Dodge」とは、「問題に直面したら、その問題の周辺から離れよ」という意味の、放蕩な西部カウボーイの格言です。「Dodge」は、カンザスのドッジシティーを意味します。ドッジシティーは大規模な牛の出荷センターを持つ西部の中心地であり、また1880年代後半の拳銃の撃ち合いにまつわる対立で有名(少なくとも映画では)な都市です。

「最適な環境に置かれたあらゆる有機体は 持てる最高の能力を自ら開発する生来傾向を持つ」という信念のもと、人間科学領域のあらゆる療法は構築されています。−「人生の発展のあらゆる段階で占星学が機能するには、『環境』の協力が不可欠です」と私はよく口にします。[簡単に言うと「適切でない環境」や「非協力的な環境」は、占星術予測がはずれる主要な理由です。著書「Synthesis & Counseling in Astrology 」の734頁を参照ください]

占星学的な「象徴」は、これを劇的に確証しています。−例えば、天王星は個人主義、自然体などに充当する天体シンボルです。アスペクトで関係する天体により、天王星はその欲求とふるまいを増強します。天王星からは ジジジッ という「強調」の電流音すら聞こえてきそうです。

天王星がトランジットやアークでアングルに関わる際、それがアセンダント(アイデンティティの中心)であればとりわけ重要な変化や動乱が予期されます。「他者(7ハウスカスプ−直接関わる環境)」をよく認識した上で、自己意識が強調されるでしょう。親密な関係、古来の合意などに見られる常軌的な妥協のふるまい(歩み寄り)や建設的相補性は試練に合い、しばしば玉砕することとなります。「私は成長し、この恋愛関係に満足できなくなった」 「彼(彼女)は私をまるで理解してくれない」 「私は人々から適切に評価(理解)される場所に行かなくてはならない」などの心情や状況が表面化するでしょう。

天王星−アセンダントの強調は、「移転(移住)」につながることがよくあります。自身の発展のための新天地を選ぶのです。いま居る場所から逃げる。それこそ「ドッジから脱出しよう(Get out of Dodge)」です。... しかしながら、自己開発のために相手の新たな進路を枯らす配偶者に延々引っ張られるということもあるでしょう。

17歳〜20歳で(天王星−アセンダントの強調が)あれば、とりわけ劇的に現象化します。継続教育(義務教育終了後社会に出る人がさらに進んで受ける職業補習/成人教育)の中断、未熟で困難な結婚、家庭の陰鬱な空気からの逃避など、晩年になってもそう埋め合わせできないような、一連の過ちが発生する可能性があります。

こういった個性化のプロセスは、非支持的な環境に対する反抗的決断や行動に満ちています。

***「Notebook」 2004年7月31日のエッセイ(「レベルの認識と占星学的潜在性(可能性)の遂行(Awareness of LEVEL and fulfillment of Astrological Potentials)」)をぜひ熟読ください。

昨日会ったクライアントはまさに上述のような体験の持ち主でした。(思春期に)学校を去り、性急な結婚をし、家を出て継続教育を棒に振りました。一連の出来事から20年を経た昨日、個性化を進展させられないまま 彼女は退屈し切った様子でカウンセリングの席につきました。−しかし、彼女は今まさに新たな機会(T冥王星?_MC、SA天王星=ASC)を迎えていました..!−この天体配置を、どのようにクライアントと共に扱うべきでしょうか。彼女の年齢や精神状態を考慮し、現状からの離脱にこの天体配置が真に実用的であるか否か。「何をどのように」すべきでしょうか。「私とはこういう者である」という実感の助けを彼女にもたらすと思われる、現状変化のステップはどんなものでしょうか。

あなたがこれまで扱った数々のホロスコープを思い出してください。どんなホロスコープが、人生初期の家庭状況や学校、友人、継続教育(専門性に注目します)、結婚、仕事などの支持的環境を通し、成長(発展)の連続性を維持していたか。またこの成長段階のフラストレーションによって、どんなホロスコープが大きなダメージを受け、結果として「達成不全」や「犠牲」の成長パターンが形成されてしまっていたか。

我々の言語には、自己救出に関する多くのフレーズがあります。逃げる、全てを捨てる、最初からやり直す、自分のために行動する、切り上げる、など。「ドッジから脱出する(Getting out of Dodge)」もまさにこの類の言葉です。

しかし、変化(エスケープ)は衝動的でなく戦略的知恵に基づくものであるべきです。−ここは、変化の理由と目的を解説し、(クライアントにとっての)支持的環境をしっかり確立するために占星家が援助すべき大切なポイントです。..テルマ&ルイーズのように、(逃げ場を失って)広大な空の向こうへダイブする、ということではもちろんありません..!

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


Essay < Page top <