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「主題統覚検査」(Thematic Apperception Test)

Tyl HP Counseling Insights, December 31, 2007


占星術の研究において、もしも現実の天空に精密に配置されている天体でなく、砂中の小石を使うことになっていたとしても、ホロスコープ分析の中核的な意義が容易かつ自然に確立され得る方法について、私は声を大にして説明したいと思います。砂上に円を描き、10個の小石をそこへ落としたら、どんな*パターン(手本, 型, 基本型)*が得られるでしょうか? それは私たちに何を語るでしょう? また、*それをそこに配置したのは誰でしょうか?*−実のところホロスコープとは、太古の昔にこうして「創造」されたものです(*特に11世紀のアラブ民族*)。

この考え方を元に、私は「半球の強調」の重要性を確立するに至りました(著書「Synthesis & Counseling in Astrology」の5〜34頁、「Analytical Techniques」アーカイブ記事1999年7月15日を参照ください)。この原理には信頼性があり、疑いの余地なく定着しているものです。

私がハーバードで著名な心理学者ヘンリーA.マレイと共に研究する特権があり、彼の研究に接して以来、その考えは私の中に長い間芽吹いていました。

マレイはかの有名な、精神的分析のための「Thematic Apperception Test(主題統覚検査)」を発明/確立しました。このテストには一連の絵を用いますが、その絵は見る者(被験者)の注意と理解を喚起し、そこで知覚した個人的問題をディスカッションの焦点にすることができるように作られています。被験者の感情、思考、生活状況などから意味と筋書きが与えられるのを待つ「絵」であると言えます。「この絵の中でどんなことが起こっていますか? ..また、その状況はどのように終わりますか?」と被験者は質問を受けます。

「患者ら」は、絵を眺める中でどんな物事を『見た』かについて、話すことを求められました。「無意識のうちにどんな場面を体験したか」「一連の絵によるドラマを終了させたものは何であったか」が、このテストの「最重要点」でした。これは非常に分かりやすい概念として定着しています。こんにち目にするあらゆる広告、写真などの中に、私たちは「自分の」物語を見ていると言えるでしょう。しかし、マレイは1930年代・1940年代にこのことを仮定し、はっきりと提言していたのです。彼の作った30枚ほどのカード(絵)を見た人々は、自らの個性の抑圧された側面について語りました。絵に対する投影は不安(心配)を解放させます。映像の持つ「安全な」イメージを通して、不安の種や心配事が前面に出るのです。これらは今日も利用されている検査法です..!

この概念化を、個人の可能性を示す出生図に適用することは決して不合理でないと私は次第に思うようになりました。前述の砂中の小石のように、出生の瞬間のシンボリズムが、本当に意義深く個々人を系統立てていることは周知の事実です。私たちはそこに「何か」を見出せるにちがいありません。見出すべきものは何でしょうか。それは、現実に見て取れる個々人の状態とどのくらい関連性があるでしょうか。

ぜひ、あなた自身をテストしてみてください。紙に大きな長方形を描いてください。それを舞台を見渡すのぞき窓とみなしてください。次に、左下あたりに7〜8人のグループを描いてください。そして右上あたりに、きれいで明瞭な、一人の人物を描いてください。さあ、2本の線をカーブさせ、右上の人物と左下の数人のグループとをつないでください。そう、道のように、「S」字のようにです。 ..右上の角から左下へ降り、数人のグループを越え、方向を変えて右下角に。..できました! あなたの描いたその絵をよく見てください。

左下角に「乱雑に集合した」(あなたが選んだ動詞ひとつにも注意してください)人物全員は、右上に居る人物(図をどのように人物化したかにも注意してください)の重要性を感じ、疑う余地なく動揺しています。右上人物は、左下グループに「説教しています」。その人物は、誰ですか?そこで物語は始まります!どんな物語ですか?他の人々は、どのように反応していますか?

あなたは今成長過程について勝手に誇張した作り話をしています。しかし、例えば、占星術上強力なシンボルが8ハウスしくは9ハウスに存在し、さらに1ハウスや2ハウス在住の天体とオポジション、もしくはクインデチレアスペクトを持つホロスコープを読むときにも似たようなことが行えるのです。

例えば、報道番組が、ある事柄のやり取りの成り行きをドラマのように解釈して報道するように、人間は「やり取り(相互作用)のドラマ」を感知するものです。私たちの敏感な知覚作用は正しく有用であり、信頼性があります。

例えば、ビル・ゲイツのホロスコープ[1955年10月28日 午後10時00分 シアトルWA]における「シングルトン(孤立状態)」に関連するドラマを見てみましょう。月は、牡羊座の服装を身にまとい、MCで孤立しています。この月が持つ主要な欲求のメッセージは「ナンバーワン」でありたい、というものです。このメッセージは、下方のグループ内の火星(職業とステイタスを示す10ハウスを支配)に主に向けられます。こういった簡単な見方からでも、彼独自のドラマが成長過程で展開していることに私たちは気づきます。さらには、ふるまいの発展や、環境下の緊張を予測してみることも可能です。

さらに、2つの天体(人物像と考えてもよいでしょう)が北西にぞんざいに置かれています。土星と金星です。世俗を離れ、人間関係を断ち、可愛げがないという自覚を周囲に隠します[7ハウス支配の土星と11ハウス支配の金星が形成するペレグリンアイランドを形成しています]。...このように物語のイメージを深めることができます。

ネルソン・マンデラのホロスコープ[1918年7月18日 午後2時54分 Umtata SAFR]を見てください。孤独な天王星が示す人物像は、人道主義のメッセージ(天王星は3ハウスを支配し3ハウス在住です)をもち、すべてを社会福祉的な観点で統治する(ファイナルディスポジター)というイメージでしょう。チャートから、この突出した天王星とマンデラの社会的支援活動(7ハウスカスプにある金星を含むトライン)の非常にスムーズな関係性が見て取れます。...このように物語のイメージを深めることができます。

ジョージW.ブッシュのホロスコープ[1946年7月6日 午前7時26分 New Haven CT]ですが、東側の自己防衛グループの向かい側には、指導的で奮起するような天体(人物像)がひとつもありません。これは「導きを待っている」ホロスコープです。

ホロスコープ内に、無造作に配置されたドラマを見つける目を育む必要があります---- つまるところ私たちは、クライアントに代わり占星術の象徴に彼らの個性−明白な特徴やそれを抑制するもの−を見出します。経験と感応力がアンテナを働かせます。そしてホロスコープと個々人の現実の関係性を確定していくのです。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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