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全体論的視点

Counseling Insights, April 30, 2008


各人の一生を通じて、幾万もの天体配置(成長上のプレッシャーや機会を表す)が巡ってきます。そしてそのほとんどは、条件付けや反応の習慣化、防衛機能、社会構造などにより消化されていきます。車を運転している時、心が別世界をさまようことができるように、例えば「プレッシャー」や「機会」が、サッとあなたのそばを通り過ぎようが、周囲に存在しようが、または追突してきて車のように前方、後方に押しやられようが、いつも人生を前に進めていくことが可能なのは、人間の運動反射神経能力と知覚が、自身の安全保持のため自動的にひたすら働くからです。私たちはギアチェンジして出発するか、あるいは修理のために自動的・反射的に店(スタンド)に寄ります。

クライアントが望むことは何でしょう? 彼らの精神はどこへ向かっているでしょうか?

答えは、私たち(占星家)と彼ら(クライアント)の双方が「変化を望む」ということです。人生を興味深くチャレンジングに、また有意義なものにしてくれる「何か」を私たちは切望します。その「何か」を通じて個人(自身)の重要性を見出すことを望むのです。その常套句(言葉が陳腐であるほど本気に違いありません)と言えるものは、占い師の最も多く受ける質問 「私はいつ運命の相手に出会いますか?お金持ちにはいつなれますか?」です。これらは350年も前にウィリアム・リリーやその他の占星家が受けていた質問です。

しかし、(占星家に質問をすることで共有する)占星家との特殊な時間とは、個々人の持つ希望達成のチャンスを得ることが叶ってはいない時でしょう。 天体配置は、その事象が起こる可能性、もしくはクライアントがそのことを意識(自覚)していること、この先に計画していること、また望んでいることを示唆するかもしれません。−占星家を訪ねることは、自身の人生の「計画」を現実化する過程の一部です。

とすると、占星家は「上記すべて」を告げなければならないのでしょうか ? しかし、どうしたらすべてを把握できるでしょう ? ほんとうに私たち占星家はそんな期待されているのでしょうか ? 私たちはいったい「何様!?」なのでしょうか。

これに関して、主に2つのことを覚えておきましょう。まず1つ目ですが、リリーは、人生の考察とは合理的かつ実用的であるべきと我々に認識させるべく彼自身の見解を強く主張しました。つまり、「子供が子供を宿すことはなく、老人もまたそうである」「衰弱して力のない者は、世の中で繁栄することはできない」などと語ったのです。

2つ目:アインシュタインは「天才は何が重要であるかを知っている」と言ったとされています。占星家が向き合う無数の天体配置、そしてクライアントが直面する人生の幾多のコンプレックス。カウンセリングの場面では、これらが共有されます。何が重要であるかを知ることは、占星学的な追究における無駄な労力を省き、占星家のスキルを焦点化するのに最良の方法でしょう。そして、一般の人々が互いに知り合うように、クライアントとの理解を深めれば重要なことはたいてい明らかになります。これこそがカウンセリングの肝です。

医学界において−私たち占星家は、とてもこの問題に無関心ではいられません−最近、伝統的な心臓病学では、原因の核心を不明瞭にするような表面的な分類を不注意に採用した結果、不整脈に関する誤った概括論がまかり通っていたということが明らかになり始めました。Jame Gleick(Chaosの著者)によると、この事実は、医学同様、生理学や数学、理化学に精通した「並外れた」研究者たちが「新たな科学」を創り出す過程で見出されたそうです。専門的な学術分野に他の(専門的な)視点が持ち込まれたのです。

そのような研究者のうちのひとり、マギル大学(モントリオール)のLeon Glass氏は、物理学と化学の特訓を受けたのち、不整脈の問題に取り組む前に、液体中の原子運動に関する博士論文を完成させました。彼は、専門家(医師)らが、概して心電図の短い帯状のグラフを見ることで、異なる多くの種類の不整脈の診断をつけていることに気づきました。「医師らはこれを、パターン識別上(実際に教科書で学んだパターンで見分ける)の問題と見なしました。彼らはこのリズムの力学的な詳細を全く分析しません。力学的な特徴は、教科書から推測できるどんなことよりも、はるかに豊かなものです。(「Chaos」281頁より)」−言い換えれば、「パターン」認識ではそこまでしか到達できないということです。全体論的な視点では、はるかに豊かな世界が開けます。

占星学においてクリエイティブな関連性を見つける際にも類似したことが言えるのではないでしょうか。つまり、私たちが天体配置に見るパターンとは、教科書で学んでいるものです。しかし、これらすべてのパターンには生身のパワフルな「動的特性(力学)」があります。そして、意味上の重要性に関する動的特性(力学)は、人間の状態(状況)に根ざして展開します。

私たちはクライアントと知り合いにならなければなりません。思慮深く抜かりない質問をしなければなりません。人生初期の成長過程に輪郭が示され、ホロスコープの天体配置により確証される「条件づけの構造」を評価しなければなりません。これが占星学における「力学」です。占星学は、この心理学的世紀・情報化時代と足並をそろえています。[この記事を読まれたら、ぜひ同部門のアーカイブの記事も参照ください]

私たちは、占星学を個人・個性に対応させなくてはなりません。そして思い切って「建設的になる」必要があります。クライアントが自らの願望像に傾斜する状況の中で、少なくとも暗闇の中の光を認識する必要があります。その光に到達する必要はありません。それは暗闇からの解放の可能性を示すものとして、コミュニケーションにおいて役立ちます。暗闇の中で熟考することは、失われた可能性(潜在性)に光を当て、問題を葬り、解決策を見つけるのに役立ちます。希望はあるのです。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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