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占星術と老い(Astrology and Aging)

Tyl HP September 30, 2000


アークとトランジットにおける海王星という天体(象徴)のパワーに、私は個人的興味をそそられます。海王星のアークまたはトランジット全般に言えることですが、アンギュラーへのいかなる強力な接触(コンジャンクションやスクエア)も、鎮圧(自我壊滅)の期間を示しています。孤独感にあふれ当惑し、自分を見失いやすい時期です。海王星からもたらされそうな理想的なインスピレーションが、この天体配置表示において得られることはめったにありません。これには何か理由があるはずです。

クライアントにこう伝えるのは素晴らしいことです。「さあ、ここで私たちは新たに勇気を奮い起こして、禁断・鎮圧・逃避・放棄(自暴自棄)の期間に立ち向かいます。逆境の中で恵まれた点に目を向け、すべてを理解し自身をリフレッシュして再出発するためにです。」

しかし、これは『言うは易く行なうは難し』です。過去の事柄についてはとりわけ身に染みる言葉です。またこの配置は人生で数回起こり得るという事実にも留意しましょう。教訓は学ばなければなりませんよね。

海王星のアークやトランジットがもたらすものについての見解を若干改善することは可能だと思います。特にその人生において多くの仕事が為され、数々の発展が成し遂げられたことで個人的な達成感(充足感)をあらかじめ自覚しているケースでは、人生の具体的な体験における海王星の働きの意義は変わることが可能であり、また実際に変わることによく気づかされます。アークやトランジットの海王星は、私たちが年齢を重ねるほどより生産的に働かせることができる、と言えるのではないかと私は思います。人間は体験の中で、人生を支持するものと挫折させるものを経験しながら自分自身を洗練させてきているのです。私たちのふるまいは調整され、修正されつつ、効率的で確実なパターンが優勢になる、というのが理想的でしょう。年齢を重ねるにつれ、海王星の消化吸収プロセスは単純化されていくように思われます。そして私たち占星家はクライアントに向き合い仕事をする上で、このことを覚えておかなくてはなりません。

私自身が海王星の厳しい作用に直面した今年(2000年、まさに今)、私はホロスコープ鑑定の行列をさばく体験をしました。私は、最も洗練された賢明な光りを当てて可能性を描写するべく、クライアントのために必死に働きました。50歳以上のクライアントの鑑定においては、より成熟した展望の範囲内へと天体のシンボリズムを変えて鑑ていました。私の努力はクライアントに好評であり、かつ如才ないと評されました。年を重ねた占星家になってから、私は年配のクライアントに対し適切な観察力(所見)を自分が備えていることに気づきました。

劇的な例を挙げましょう。エベレストに最初に登頂した*エドマンド・ヒラリー卿*は、76歳でT海王星がN太陽に正確にオポジションになり、併せてSA海王星がN月に(これまた正確に)オポジションになりました。これは困難な配置です。人生の終焉でしょうか。もう夢は見られない?登山はもう無理なのでしょうか。

しかしこれは、ヒラリーがエリザベス女王?世からナイトの位を授与された正確な時期なのです。彼の出生の海王星はペレグリンでMCにあります。彼の伝記には、T海王星がアセンダントを通過した人生早期に非常に大きな空白があります。

まさに人生の時間の経過とともに変化し、成熟していく天体のシンボリズムについてのこの考察は、他の外惑星にもおそらく適用可能です。

<土星>

私たちは、トランジットの土星の90度毎のサイクルに伴い構築され得る一連の変化を確かに実感します。人生を効率的な状態に導いてくれる必要不可欠な統制が、両親(通常は父親)から教師へ、(仕事の)指導主事へ、政府へ、教会へ、そして自分の内面の神へと移る一連の変化を理解します。それは、年齢を重ね知恵が発達することによる充足状態の変化ではないでしょうか。そして時が経つにつれ、それら必要不可欠な統制は個性の一部として吸収され、その統制の存在感や圧力は減じ、消えていくのではないでしょうか。

<天王星>

個性化の炸裂と爆風が、当初混乱や転換、そして変化を引き起こすのは確かなことです。しかし時間が経過すると、体験によって器用さ(工夫力・巧妙さ)が喚起している様子を私たちは目にします。耳障りな個性の主張が、最終的には評価される個性となるのを目の当たりにします。それは、年齢を重ねて発展させた自己状態(性質)の充足状態の変化ではないでしょうか。完成した(人生の)姿勢は、個性の表明ではないでしょうか。「私はもうこれ以上、○○や△△のために戦う必要はないのだ..!」

<冥王星>

ほかの成熟次元と平行して発達する個人の「力」の管理能力を、私たちは確かにそこに見ます。個人の展望の根本的かつ劇的な変化が、最終的に自分が何者であり、何を行なうべきかの感覚を定めていくのを目にします。私たちは人生の中で、(自身の)存在と場所を見出します。これは、老いゆく過程を通して確実に経験する充足状態の変化です。しかししばらくすると、それらの大変化に必要性も重要性も感じられなくなります。年を取れば人は落ち着きます。これは、「力」を理解し、能力に合わせて利用できるようになったということを表しているのでしょう。

私は、人間が若さにまかせて動く時期にも、体験と洗練を重ねて成長する時期にも、また知恵がよく熟する時期にも、これらの重い天体の働き方を理解していることが占星学に役立つと思います。私たちは、これらの可能性の提示の仕方を調節しなくてはなりません。また自分の発言を再確認しなくてはなりません。私たちの夢や自己像は変わるのです。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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