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統合の要点

Tyl HP Analytical Techniques 2000 Jan 30


<解釈の迷路>

占星術の学習にあたり、私たちは教科書の中のたくさんの用語から、断片的な形で解釈を学ぶことになりがちです。その結果、多くの仮定的な詳細に気を取られ「木を見て森を見ず」の例えのようになることがあります。私たちが読み聞きするものの中には、「これは...という意味です」など定型文のようなものがかなり多くあり、それらは集まって迷路を作っているかもしれません。あらゆる解釈をくまなく学び、あらゆる情報を管理できたら、世界で最も優秀な占星家になれると言われているかのような気さえしてきます。

しかし、そんなことはありません。使い古された修飾語を幾千も記憶し、その記憶を巧みに引き出し得意げに口にしたとしても、それは人生のドラマの把握にはつながりません。人生の目的を理解するという占星術の視点から見れば、情報を使いこなす努力によってかえって私たちは空回りしているかもしれません。

<2つの主要な教義>

このような「情報病」に対する特効薬は、シンプルで組織化された占星術的象徴の分析へのアプローチです。初歩的なことですが、古典的な記述を読むことに慣れたために消化が困難になった2つの主要な教義があります。ひとつは、個人をホロスコープに当てはめることはできないということです。(なぜなら、個人を私たちの占星学的知識の範囲内に閉じ込めることになってしまうからです。)私たちはホロスコープを個人の現実に照応させ、そのホロスコープに生命を吹き込まなければなりません。2つ目は、占星学的な配置の特徴はガイドラインに過ぎず、単に物事に対する個人の反応や対処の仕方を推測させるものであり、またそれらは各個人の人生において異なる形で体験されていくものだということです。

何千もの詳細な辞書的記述にこだわるのでなく、私たちは上のような考え方のもとに占星術的な配置の特徴の「感じ」をつかんでいきましょう。配置の特徴の「感じ」をつかみ、クライアントの実人生においてその「感じ」はどのように表れているのかを把握しましょう。会話の中でのクライアントの本音の吐露からその実人生を学び理解し、その上でクライアントの現実に占星術を照応させていくのです。

<芸術的な分析を始めよう!>

やっかいな断片的学習から解放されると、より簡単に分析を行なう方法に気づくことができます。ポイントは柔軟性です。占星術を個人の現状に合わせる作業を通して、私たちは占星家の仕事の重要性を認識し始めます。私たちは複雑なジグソーパズルを解くのではなく、個人の成長過程における現実の問題に向き合うのです。

例えば、半球の強調は一定の見方を確立するものですが、その観点は解釈の統合の過程で他の天体配置の特徴にも拡がり、分類可能なまとまりとなっていきます。太陽と月のブレンドについては、まずホロスコープの半球の強調から分析し、その「感じ」をつかみます。もし土星の逆行や月のノード軸へのハードアスペクトなど重要な特徴が示されている場合、姿を現し始めた「感じ」の中にそれらの特徴も加えます。さらにルーラーシップの動的特性(ハウスの支配星)からは、クライアントが体験する可能性のある出来事を加味します。このようにして、それほど時間をかけなくとも私たちの求める「感じ」をつかむことができ、実際のクライアントに合う興味深く豊かな会話を発展させる基盤を得ることができます。

例えば、ホロスコープの半球の強調が地平線下にあり、同時に東側にも片寄っている(アセンダントの保護)場合、初期の家庭生活における「未解決の課題」の感覚を持ち、それが成長過程で防衛的な性格構造を形成しているものと判断できます。さらに、もしノード軸との強力なハードアスペクト(オーブ約2度)がある場合、その天体や支配するハウスを通して、未解決の課題がもたらす防衛的な性質の背後にあるものをおそらく見つけることができるでしょう。ノード軸に対するハードアスペクトが表すものは、強力で深く浸透している母親の影響です。

さらには冥王星と月のスクエア、コンジャンクション、オポジションなど、母親に焦点が当たっていることを確定する配置の特徴が見つかるかもしれません。アセンダントの支配星はおそらく逆行しているか、強い緊張の配置になっているでしょう。また、両親軸の片方または両方の支配星が強い緊張の配置を持っているかもしれません。これらのポイントは(しばしばひとつのホロスコープに同時に表れます)、個人の人生の成長の課題における同一のテーマを表します。

私たちの仕事は、天体配置の特徴からこのような傾向を見いだし、クライアントと共にガイドラインを追求し、行動パターンの修正や戦略変更のプランを立てるなど、多くの治療的アプローチでクライアントの助けになることです。

<さらに>

グランドトラインは最も強力な防衛システムです。大切なのは、これを「防衛システムである」と説明することではなく、クライアントの実人生にこのアスペクトの象意をうまく照応させることです。なぜ防衛が必要なのか、それはどのように機能するのか、初期の成長過程で必要としていた程にそれは今でも必要なのか。ある程度の安全を感じられる大人になった今、そのエネルギーを解放し更なる発展や幸せのために利用できないだろうか。現代的な占星術カウンセリングでは、天体配置の特徴をこのような考え方のもとに扱います。

<さあはじめよう>

自分自身のホロスコープを見て半球の強調を判断し、そこから分かる自分の特徴を文にしてみましょう。もし東に偏っていたら「防衛的なのはなぜか?」、南に偏り世間に翻弄されているなら「なぜ支えがないのだろう?」「安定のために何が足りないか?」、西に偏り他人へ奉仕する傾向が強ければ「なぜ自分のことを後回しにしてしまうのか?」、北に偏っていたら「人生初期の未解決の課題に対し、自分は何をすることができるだろう?」というようにです。

あなたの太陽と月のブレンド(月で表される切迫した主要な欲求を、太陽のアーキタイプのエネルギーを通して充足しようとする)の「感じ」をつかみ、それについて2つのフレーズを書き出し、上記の半球の強調から分かったこと(「感じ」)をそのフレーズに加えてみましょう。次に「これらはどのように発展していくのだろう?」と自分に問いかけてみてください。自分の社会的な意識、知識や人格の特徴などを考慮して、自分の発展についていくつかの仮定を作り、その仮定を確証する要素をホロスコープの中から探してみましょう。

次に、土星の逆行やノード軸に対するハードアスペクトなどの重要な配置の特徴をチェックし、その後、主要なアスペクト構造を見つけ、アスペクトしている天体の支配ハウスの特徴から推測できるハウス体験の感覚を組み合わせてみましょう。あなたのシナリオは、第一印象の半球の強調から一貫し、論理的で現実的な方針のもとに発展させていくとよいでしょう。

<事例>


1926年6月1日 午前9時30分 PST カリフォルニア州ロサンゼルス ♀

このホロスコープを作成し、一緒に解釈していきましょう。半球の強調を見てください。南側に顕著な偏りがあり、出来事に翻弄され、吹く風に流され、利用され、犠牲になる可能性が推測されます。太陽は双子座、月は水瓶座にあります。革新的で常識破り、社会で重要な位置を占めたいと願う水瓶座の欲求は、多様化した知性や感覚、コミュニケーションのエネルギー(双子座の太陽)を利用することになります。周囲の人々に対し敏感な配置です。この女性は、大切なもの(愛)を得るためにはどんなことでもし、大切なものに関する約束に翻弄されるところがあるでしょう。

次に、土星の逆行に注目します。これから何が推測できるか考えてみてください。この女性は発達の過程において、自分を支えるものがありませんでした。彼女はおそらくとても犠牲的だったでしょう。自分を特別な人間と見なそうとして、色々な努力も必要としたでしょう。もちろん具体的には、焦点は父親にあり、その焦点はのちに一般的な男性へと拡がり、さらに人生の様々な側面に浸透していったと思われます。

次に、重要なアスペクトに注目します。まず、ライジングの海王星は月とオポジションになっており、この軸は土星とスクエアになっています。これは、重荷にあえぐ感覚を表しています。2番目に、土星の逆行が太陽と水星のコンジャンクションに対してクインデチレ(165度)になっていることに注意してください。これは重荷の感覚を抱えつつ、大切なものに近づけるようになるため自分を進歩させたいという強迫的な観念を持つ傾向があります。

そして最後に、太陽がアセンダントを支配していることに注目してください(太陽と土星の関係から分かることと同様のことが見て取れます)。水星は11ハウス(愛の欲求)と2ハウス(自尊心)を支配しています。土星は親を表す4ハウスに在住し、ここに焦点を作っています。すべての判断がひとつにまとまってきました。

このように、すべての推論は自然に第一印象を補完するものとなっていくことが多くあります。

これはまだ始まりに過ぎません。しかしそれでも全体論的な見方の始まりであり、人道主義的な解釈の仕方であり、単なる解釈記述の用語リストではありません。ホロスコープのこのような芸術的な解釈方針のもとに推測した骨格的な情報だけでも、マリリン・モンローの人生の発展に関する重要な分析や議論を始めるのに充分であると、皆さんもきっとお思いになることでしょう。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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