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レベルに関する大変重要な考察

Tyl HP Analytical Techniques 2001 Feb 20


占星術の天体配置の特徴は、全ての人々に同様に働くわけではありません。ブラームスの楽曲がすべての人の音楽の好みに合うわけでないことや、赤い色が全ての人に似合うわけでないことなどと同じように、天体配置の全てが個々人の現実において同じように現象化するとは限りません。似たような現象が表れることもあるでしょうが、「レベル」という観点から見た時、かなり大きな違いが出てくる可能性があります。これが、占星術の主眼が教科書的な記述にないと言う理由です。占星術は分析的、評価的なものであり、いつでも個人の実人生に照応させて考えるべきものです。

例えば、サウスダコタ平原の小さな家に住み、人里離れた農場で父親の後を継ぎ働いている農夫(1963年6月15日 午後1時 サウスダコタ州オニダ生まれ)と、裕福で恵まれた家庭に生まれ、アイビーリーグ教育を受け、農業関連記事の編集者としてタイムマガジンに雇われバルカン半島で農作物の収穫量の回復の査定をしている女性(1963年6月15日 午後1時15分 ニューヨーク州スカースデール生まれ)が、「同じ」あるいは「ほとんど変わらない」ホロスコープを持っていることは有り得ます。

この2人がどのように育ち、どんな家系を持ち、両親との関係でどのような体験をしたか。また、どんな文化社会的環境の刺激を受けたか、競争や報酬などに関してどんな行動パターンの発達が促進されたか、などは重要な考慮点になります。周囲からどんな期待がかけられたかや、各々ができることなどは大きく異なります。2人のホロスコープを見ながらレベルの見方を調整し、それぞれの実人生において予測可能の範囲内で天体配置の特徴を方向づけることは難しくありません(ぜひ実際に見てみてください)。このような調整の必要性を認識し、それを忘れさえしなければ、調整を行なうこと自体は容易であり、かつ大変賢明なことです。


農夫 1963年6月15日 午後1時 サウスダコタ州オニダ生まれ


女性 1963年6月15日 午後1時15分 ニューヨーク州スカースデール生まれ

アセンダントに絡む冥王星のトランジットは、例えば戦略的な管理職にとっては、ビジネスにおける国際的な力争いに勝つため国籍を変えることに関連するかもしれません。もしくは顔の整形手術を受け、別人として人生を生き直そうとする人かもしれません。4ハウスカスプが強力に活性化されている場合には、不動産を購入したり家を新築したりするかもしれません(家族の運気も同調していればですが)。もしかしたら単にひと部屋改装するだけになるかもしれません。「レベル」がやはり最も重要になってくるのです。

<レベルを見極める>

ホロスコープのレベルを確認する唯一の決め手は、クライアントの告白です。私たちはクライアントの現実を知る必要があります。そのホロスコープを本人がどのように生きているか、また人生の様々な場面において、天体配置の特徴がどのように具現化しているかを把握することができるからです。

ホロスコープを見ただけでは、チャートの男女の別、人間・動物の別、イベントチャートかそうでないかなどを見分ける方法はありません。クライアントが世界のどこで育ったとしても、重要な特徴であるはずの人種や国籍、宗教などを判断する方法はないのです。判別が不可能であるのに、どうして可能だと言えるでしょうか。言えるはずがありません。判別可能と公言する占星家は、解釈の技術の信頼性やその訓練を放棄しているのでしょうか。占星術を良く学ぶには、人生について良く学ばなければならないのです。

現代占星術では「当てもの」ゲームを行ないません。私たちはクライアントの本質や成長過程の緊張、また充足を目指す私的努力のシナリオの元となるあらゆる関心事に対して指針を処方します。ホロスコープはコントロールパネルではなく、鏡です。

私たちは次のような点において、クライアントを査定しなければなりません。それはクライアントの話し方、言葉使い、思考パターン、仕事上の地位、自己表現(性質の気難しさや服装センスなど)、心理的な姿勢(挨拶や礼儀、偏見、感受性など)、自己の成長に対する関心度、などです。これらからクライアントの社会的「レベル」を知ることができ、クライアントに合わせた会話の仕方も考えることができます。そうして初めてクライアントと歩調を合わせることができ、多くの場合カウンセリングは発展し、充実したものになります。

かなり多くのケースにおいて、私はクライアントを過小評価してきました。その結果、「レベル」の査定をなるべく遅らせる必要性を長年にわたり学ぶことになりました。なぜなら、天体配置の特徴を解釈する度、また過去の発展の過程を打ち明けられる度に、クライアントの現実は当初の私の見立てに多くの要素を追加していったからです。予期せぬ事はたくさんあり、ホロスコープ解釈を実人生に照応させるにあたって微妙な差異がいくつも出てきました。

一方、またかなり多くのケースにおいて、私はクライアントを過大評価してきました。人が何かを為したい時、努力によってそれを達成できると皆が思っているわけではないことを私は学びました。変化や改善、報酬を期待する人々は多くいました。しかし冒険を避け、自分で気づいているはずの真の願望から目をそむけようとする人々も同じように多くいました。おそらく、消極的と見られても今までの習慣の中に閉じこもっていたほうが安全だからでしょう。

このレベル確定の作業は、女性のホロスコープにおいてしばしば複雑になります。なぜかというと、その人生の成長をリードしているのが夫である場合が多いからです。そのような場合、解釈上夫のホロスコープのほうが重要になることがあります。ある女性のホロスコープを見ながら、どうやって彼女のパートナーのホロスコープ解釈をすればよいでしょうか。[これはとても興味深いテーマなのでそのうちエッセイのテーマとして取りあげます。]

もちろん、クライアントの年齢もとても重要です。年齢の「レベル」があらゆる行動パターンの表出の可能性を変化させることに気をつけなければなりません。天体をホルモンと考えてみましょう。人生のある時期には強く働くホルモンによる衝動が、歳を重ねるごとにあまり働かなくなることは皆さんよくご存じでしょう。60歳で新しいビジネスを立ちあげるというのは珍しいことです。18歳での結婚は、熟慮の末の結果ではないことがおそらく多いでしょう。また50歳での転職は難しいかもしれません。このように、天体配置の特徴をクライアントの実人生に照応させていく過程では、「レベル」つまり明白な現実をまず見極めるべきであり、教科書にあるようなプロトタイプ的な輪郭を期待してはなりません。

「レベル」とは、占星家との会話におけるクライアント本人の現状吐露の真剣さや明確さに比例して明らかになるものである、ということがここでの重要事項です。

<クライアントとの信頼関係を築く上で障害になるもの>

経験の浅い占星家は、カウンセリングの過程やクライアントの存在そのものを怖く感じることがあります。自分や自分の話を気に入ってもらえるかどうかなど、とにかくクライアントを喜ばせなければならないというプレッシャーを感じるのです。

こうなると、クライアントの成長について言及することを怖れるあまりひきつった笑顔が増え、占星家は自分のことばかりを話し始めます。そして「..そのうち分かってくるはずですよ。それについてあなたはどう思っていますか? 正しい方向に進んでいると思いますか?」など、不安定で自信なさげなフレーズを多用しがちです。端的に言えば「はい」か「いいえ」で答えられる質問のほとんどは無駄な問いかけであり、カウンセリングを瞬時にストップさせてしまう怖れのあるものなのです。「..分かりますか?」という質問の答えがもし「いいえ」だったら、次にどこへ進めばよいのでしょうか(「クリエイティブアストロロジャー」p75〜p87も参照してください)。

カウンセリングに対して準備不足の占星家は、クライアントの過去における発達の過程を考慮することを忘れがちです。ソーラーアークやトランジットなどから過去の成長の時期について質問することは、独特な発達時期についてのクライアントの吐露を促すためにとても重要です。それだけでなく、占星術の解釈過程や占星家本人に対しての信頼を得るためにもこの質問は有効です。

重要なアークやトランジット(通常はホロスコープのアングルが関係します)を見て、カウンセリングの内容がどこへ向かうのかを意識しない占星家は、クライアントの戦略的な助けとなることはできません。クライアントの告白から「レベル」や実践可能な戦略が明確になるまでは、クライアントの未来の可能性を充分に読むことはできないかもしれませんが、天体配置の特徴の把握は事前に行い、目標となる時期を確かめておかなければなりません。カウンセリング全体をその好機に向けて組み立てなければならないのです。過去についての認識や評価を踏まえ、近未来の戦略的な充足へのかけはしとなり得るこのカウンセリングの場において、鍵となる質問は「この半年から1年の間、あなたは自分がどんな状況にあると思いますか?」です(「クリエイティブアストロロジャー」p177〜p186を参照してください)。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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