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均衡する天体配置の特徴

Tyl HP Analytical Techniques 2001 Oct 29


カウンセリングの準備としての分析作業の際、クライアントの発達過程における本人の関心事や体験領域に、明らかな対立関係を示す天体配置の特徴を見つけることがあります。もし強力な火星と強力な土星が対立していたら(「行動」VS「制御」)どのようにそれを解決すればよいでしょうか。あるいは土星と天王星が成長過程の緊張を示している(「古さ・保守・伝統」VS「新しさ・自由・前衛」)場合はどうでしょう。このような問いに対する教科書的な答えはありません。

成長過程における緊張状態の解決の努力が人格を形成し、人生の充実感の度合を決めます。両親から受ける影響を含む複数の圧力をクライアントがどのように扱ってきたかがカウンセリングの中で重要なポイントになります。

では私たちがよく目にする、微妙な均衡を保つ天体配置の特徴について考察してみましょう。

ある女性のホロスコープですが、逆行の土星と逆行の海王星のコンジャンクションが7ハウスカスプ天秤座にあります(逆行土星特有の現象が海王星により強調され、おそらく親密なパートナーシップにおける困難などとして表出するでしょう)。しかし、対人関係において愛嬌や魅力を主に表すとされる 金星=太陽/月(太陽と月のミッドポイントへの金星のアスペクト)も彼女は持っています。

[簡単な概要のメモを取ってみると理解が進みます。「客観的モード」で天体配置の特徴をただ読むよりも、書くことであなたの頭脳をより活性化することができます。]

この2つの天体配置は対立的に作用します。またこのホロスコープでは天体が顕著に東側に偏っており、7ハウスカスプが示す「困難」の位置から離れています。[これもあなたのメモに書き加えてください。]彼女の現実は次のようなものでした。人生初期の悲惨な体験(深刻な放置、父親のアルコール中毒、両親の離婚等)から彼女は防衛的になっていました。そして、一対一の対人関係には常に大変な困難が伴いました(彼女は50歳で未婚であり、90歳の父親の世話のため実家に残っていました)。その一方で、彼女は自分でビジネスを立ち上げており、公的な知人らと難なくスマートに交際し、また色々な困難や支障を抱え続けているにも関わらず自分の精神的発達を自慢するようなところがありました。父親からの影響を中心軸として「個人的な対人関係における困難(1)」、「ビジネス上の人間関係における成功(2)」という2つの「次元」「体験のベクトル」「領域」が存在しています。

[上の事例について再度考察してみてください。天体配置の特徴の概念はシンプルですが、実人生におけるその表れ方はさまざまです。あなたのメモを再度チェックしてください。ここでは他の天体を考慮に入れずにこの女性の成長のシナリオを考えてみてください。]

ここで重要なポイントは、均衡を保つこのような天体配置の両方を分析の準備過程で良く把握し、クライアントの成長のシナリオを仮定してみる必要があるということです。どちらか一方の配置を見落とせば準備は不十分なものになってしまいます。

アメリカのような文化圏においては、個人のホロスコープの9ハウスのシグニフィケータに対する困難なアスペクトから、ほぼ間違いなく教育の中断を推測することができます。そしてそれは当人の人生の発展過程において大きな分岐点となるでしょう。例えばある女性のホロスコープでは、9ハウスを支配する木星が海王星とオポジションを形成しており、学習の中断の可能性を示しています。しかしこの木星は水星と牡羊座でコンジャンクションして、ライジングになっています。これは先の「学習の中断」に対抗する表示であり、自己の発展にとって学習が重要であることを示しています。

この配置では、教育に特に重要な価値が置かれることが示されています。「教育」や「学習」はこの女性の人生全体に深く浸透します。しかし学習の過程は変則的であり(多くの事例からそのことを確認できます)、多くの場合その変則性は18〜19歳頃に現象化します。自分の意見をはっきりと述べるこの女性は大学へ入学しましたが、最初の年に突然退学しました。彼女は大学の重要性や大学生活から学ぶべきことなどについての予備知識を周囲から得ておらず、自身の大学生活ついて何の方向性も意識していませんでした。彼女は脱落してしまったのです。その時トランジットの土星は4ハウスを支配星する月とスクエアになっていました[大学中退はどちらかの親に対する反抗の表明だったのでしょう]。そのすぐ後にはトランジットの天王星がアセンダントとオポジションになりました。

しかしこの女性はその後復学し、「多年学生(perennial student)」(彼女の言葉です)となり単位を取得し、精神的な分野を深く学びました。

典型的には、強い緊張状態にある9ハウスの支配星と、9ハウス在住天体との対立(例えば太陽と木星、あるいは木星と水星等)において、このような均衡する天体配置の特徴ははっきりと表れるでしょう。

そして、両親から受ける影響のバランスについての矛盾した表示からも困難を読むことができます。例えば、逆行の土星が太陽や月とトラインになっていることがあります。この条件だけで、「土星の逆行現象」(顕著にバランスを欠いた、もしくは適格でない両親の影響を予測するものです)の影響下にありながらも、何らかの形で関係はスムーズに保たれていた(トライン)という可能性を推測することができます。おそらく親子は互いにあまり干渉せず人生を構築していき、摩擦をうまくやり過ごしていたのでしょう(しかし、傷ついていないわけではないということを覚えておいてください)。

もし土星(逆行土星も含む)が太陽とスクエア、オポジション、あるいはコンジャンクションで、冥王星が月とオポジション、スクエア、コンジャンクションになっているとしたらどうでしょう。前者は父親シンドローム、後者は母親シンドロームです。これらの配置で最も多く見られるパターン(成長のための挑戦)は、「過干渉で支配的な母親像に対する受動的あるいは不在の父親像」という構図です。生命体が求めるバランスの取れた発達の観点から、クライアントが両親とどのように関わっているか、両親をどう評価しているかということは重要な鍵になります。クライアントに対して次のような質問をしてみてください。「家族間では誰が事を仕切っていましたか?」

均衡する天体配置の特徴は「ミッドポイントピクチャー」においてもしばしば表れます。例えば、土星=金星/火星(禁止)と牡羊ポイント=火星/海王星(明確なカリスマ)の組み合わせなどです。これらをうまく調和させることは難しいことです。このクライアントは公的でカリスマ性のある指導者的ペルソナを持っていましたが、親密な関係に関して絶対的な不快感を示していました。「愛して傷つく」ことを避ける(アイデンティティの保護)ための習慣的言動について認識すること、不快感の根源にたどりつくことがカウンセリングの目的でした。ここでの明確化は、カリスマ的な輝きによりすでに進みつつあったクライアントの人格の成長を促進する更なる内的エネルギーの解放を助けました。

MC=太陽/ASC(仕事上の地位や業績などを通しての個人的な承認)は、11ハウス(愛される存在でありたいという願望)を支配する天王星と土星のスクエアがもたらす課題とのバランスを取りながら獲得していく必要があります。自分の人生体験にもし充実感を感じられないとしたら、果たして真に自分を承認できるでしょうか。

11ハウスの月(支持してくれる友人のネットワーク)が例えば水瓶座(新鮮な方法で他人の助けとなりたい欲求など)にあり、4ハウスを支配する冥王星からオポジションアスペクトを受けていて、母親からの影響や抑圧、過少評価、権力争いなどによりその月の個性や輝きが台無しになってしまっているケースではどうしたらいいでしょうか。

分析作業の中で明らかになる窮境には、明確な解決策が得られないものも時々あります。しかし、あなたのクライアントはその混乱そのものを現実に体験しています。成長過程におけるこのような「綱引き」の認識は、自己の現実を直視する助けとなり、時に大きな力さえもたらし得るものです。他の天体配置の特徴解釈も加味してカウンセリングの内容を深めていくことは、常習化した行動や固定観念からクライアントを救出し、自由への一歩を踏み出す方向へと導くでしょう。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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