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未来の焦点を見定める

Tyl HP Analytical Techniques 2002 Oct 29


カウンセリングでの総合的な認識や未来予測において、次のいくつかの概念がクライアントの「未来の焦点」の解釈の手引きとなります。クライアントの人物像や初期の家庭環境での成長を描き出し、大人になってからの対人関係や家族の在り方、職業などに持ち込まれた行動パターンの元となる心理力学的な付随事項を明確化し、そしてクライアントのビジョンや希望、決意、環境の条件などを勘案しながら、私たちはクライアントの未来の発展を予測していきます。

..と言うと大げさだと思われるかもしれませんが、実際これは確かなことです。解釈の過程全体はクライアントと協力しながら行います。過去・現在・未来すべてについての話し合いで明確になる現実に占星術の指針を照応させていくことで、私たちはクライアントを真に力づけることができるでしょう。

修士課程コースの私の講義では、カウンセリング時間の25〜30%をクライアントの未来の焦点化のために使わなければならないと教えています。過去から現在、未来へと続く流れはスムーズです。それはまさにクライアントの欲求や行動パターン、計画、夢の自然な拡張と言えるでしょう。カウンセリングの焦点を未来へ向ける鍵となるフレーズは、「ではこれから、今後6ヶ月〜1年間のあなたの人生のプランについて話し合いましょう」です。

この質問は不可欠です。この問いかけにより、クライアントの人生を未来の象徴的な指針(配置の特徴やアスペクト、アーク、トランジットなど)にまで拡げることが可能になり、またクライアントのプランの常識性、現実性、達成の見込みなどが直ちに明らかになります。

<占星家の準備>

占星家は1〜2年先までの象徴的な天体配置について把握しておく必要があります。ソーラーアーク(天体同士あるいはミッドポイントを含むもの)やセカンダリープログレスの月の動き、重要なトランジットなどの第4ハーモニックのすべてのアスペクト(コンジャンクション、オポジション、スクエア)、特にアングル、太陽、月への接触(人生における重要な成長や変化に関連します)を注意深く読むことが大切です。

近未来において重要な「ヒット(接触)」が見つかったら、そこから時間をさかのぼり、その時期に向けての踏み石となり得る支持的かつ発展的なアスペクトを探します(「(Solar Arc)ソーラーアーク」第4章「Practical Management of Predictive Measurements(未来予測の実践)」特にP122から始まる「Back-flow(逆向きの流れ)」を参照してください)。

例えば、今朝(2002年10月中旬)カウンセリングを行った42歳のクライアントですが、ソーラーアークの冥王星=土星という強力で危険な配置が翌年(2003年)に形成され、同時に土星が太陽とスクエアになることが分かりました。土星は彼女のMC(職業、地位、父親)の支配星であり、冥王星はパートナーシップや仕事の協力関係を示す7ハウスを支配しています。

この時期を起点として現在に向けて時をさかのぼってみると、確実な輝くソーラーアークASC=太陽(他者の反応を通した自己の明確化)が見つかりました。これは有意義な相互関係、相互作用の可能性を示しています。またそれを支持するトランジットも同時期に多くあります。特に2ハウスの支配星である水星に対しトランジットの冥王星がコンジャンクションを形成します。このように読んでいくと、2002年の終わりに職業上で大変生産的な時期があり、そこから次第に2003年2月〜3月の崩壊や暗転、宿命的な不運の時期へと経過していくことが推測できます。

さらに時間をさかのぼり、カウンセリングを行っている現在まで戻るとSP(セカンダリープログレッション)の月(月は4ハウスの支配星)がMCとスクエアになっており、彼女のアセンダントを支配する金星に対しトランジットの天王星がコンジャンクションになっています。これは職業上での意志決定(地位の変化)や、個人的な発展にスポットライトが当たる時期であることを示しています。また、ミッドポイントに対するソーラーアークも重要です。ここではSA冥王星=水星/火星ができており、多くの批判や議論の可能性を示しています。

<クライアントからの情報>

「では、今後6ヶ月のあなたの人生のプランについて話し合いましょう」

私のクライアントは重要な案件を3つ抱えていると言いました。1つは現在進行中の訴訟問題でした。労働者のひとりが起こした訴訟で、彼女の資産が関係しています。これはSA冥王星=水星/火星によって示されています。[しかし「そのうち自然におさまるでしょう。問題はありません。」という発言から、この訴訟を本人はそう問題視してはいないことが分かりました。]

第2に、彼女は現在の住まいから離れた場所に家を持っているのですが、この家は、離婚により複雑化した所有権の問題を抱えています。彼女はこれを売りに出したいと思い、売家のリストに載せました。これは4ハウス(家)の支配星である月とMCのスクエアなどで示されています。

第3に、同じく住まいから遠く離れた地のショッピングセンターを彼女は相続しました。それは月々の収入源になっているのですが、彼女はそうした事業の監督の経験がなく、そのことに起因する問題も継続的にあるようでした。事業のパートナーである兄弟は売却を勧めています。ここで、2ヶ月後の年末の好機(SAASC=太陽、t冥王星?_n水星(2ハウス支配))に焦点を合わせ、事の展開を明確にするため私はこう質問しました。「今ショッピングセンターを売りに出したとして、すぐに売れますか? 買い手が現れる兆しはありますか?」実際には、すでに買い手は存在したのです。

資産を整理して確実に手元に置くために件の家やショッピングセンターを素早く売却し、残りの人生を破壊しかねない苦悩を免れる道がこうして明確になりました。2003年2〜3月の困難期に休息する準備を整えることが可能になり、彼女は穏やかで落ち着いた状態でその時期を迎えられるでしょう。もしこのような対策を立てずに状況を放置していたら、SA冥王星=土星は確実に彼女の資産の全てを巻き込み、人生を厳しくつらいものにし、没落の可能性も否定できません。

SA冥王星=土星から2ヶ月後には、また別の事象による現状からの救出や、状況の優勢といったまさに「黄金の時期」を予測できますが、その詳細はここでは必要ないでしょう。

<結論>

クライアントの現状の告白によって未来予測の戦略的な意義が認識できれば、カウンセリングがいかにスムーズに進むかは明白です。話し合いの中で、プランは自然に現実的なものとなり、占星家の常識的な状況把握やクライアントの協力的な思考により、占星術はその威力を発揮します。話し合いの正当性を確かめる鍵は、「深いところで私はこれが正しい、これこそ私の進むべき道だと知っていました。私はこれまでそれを認めたくなかっただけでした」というクライアントの言葉です。

ここでのポイントは、クライアントの現状吐露は、過去についてのみならずあらゆる成長過程において、そして何より未来に向けて占星術をその人生に活かし、自身の計画や希望を叶えるために不可欠なものであるということです。

**このようなケースで、クライアントからの情報を考慮しない「パフォーマンス的な」占星家のことを考えると少しぞっとします。SA冥王星=土星などの表示からただ単に破滅のメッセージを伝えることは、その時期まで(おそらくその時期以降にも及び)のクライアントの人生を台無しにするひとつの原因となってしまうでしょう。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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