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天体の逆行と逆行パターンの再考(Retrogradation Review and Rx Patterning)

Tyl HP Analytical Techniques July 31, 2004


占星術の学習に執心する私たち占星家は、実際の分析で注目する天文学的配置のすべてが何か特別な意味を持つはずだと考える傾向があります。

全体とは部分の総合であり、小宇宙が大宇宙を反映するという観点においては、ホロスコープ内のすべては何らかの意味を持っていると言えます。− しかし、すべての配置が極端な独自性(例えば土星の逆行など)を持つというわけではなく、いくつかの配置がひとまとまりになって初めて意味を獲得(優勢なエレメントやモードの強調、陰陽の強調、ディスポジターのパターンなどによる)するものもあります。

「逆行」とは、あらゆる惑星が定期的に示す、黄道帯における見かけ上の逆方向への動きです。「逆行」は視差の顕現であることを私たちは知っています。静止した黄道帯の背景に映し出された、軌道上で動きを遅くする惑星は、地球では逆に動いているように見えます。

水星の逆行は、対旋律のように異なる領域で対比的に体験する「第二の議題」の存在を示すと言えるでしょう。振舞いの意味(重要性)を心(理性)が複数の階層で意識しており、通常それは水星が支配するハウスから推定できる人生の特定領域に関連しています。 マイケル・ジャクソンは5ハウスとアセンダント(幼年期・子供に関することと自己実現)を支配する逆行水星を持っています。ヒラリー・クリントンの逆行水星は、MCを支配しアセンダントにあります(親密な関係における計画と職業的地位)。モニカ・ルインスキーの逆行水星は、MC蟹座で太陽とコンジャンクションしています(感情に基づく恋愛関係と地位)。故ダイアナ妃は、7ハウスを支配し蟹座在住で太陽とコンジャンクションの逆行水星を持っていました。

同様の視点で、金星が逆行の場合は、対人関係に関する転機によって人生が大幅に左右されることが予想できます。そして金星が支配するハウスは通常、人生の活動と経験に優位を占めます。逆行の金星は、感情的な充足を得ることが容易ではなく、不満、苦闘を抱えがちです。「第二の議題」に関わる何かが邪魔をしている可能性があり、それは人生初期の成長と振舞いのパターンの形成過程を反映する、他のアスペクトの構成から読み取ることが可能です。ヒトラーは、厳しく問題の多い(火星とコンジャンクション、土星とスクエア)逆行金星を持っていました。サダム・フセインや、マジック・ジョンソン(アスリート)も逆行金星の持ち主です。

よく知られているように、水星と金星は常に太陽のそばにあり(水星は23度、金星は44度以上太陽から離れることはありません)共に機能しています。この3天体のうち2天体のコンジャンクション(または全3天体のコンジャンクション)はいずれも「理想化」の表示です。人生の活力や心(理性)、そして関係性の感覚は、完全性を期待させる「何か」のもとに集結します。ビリー・グラハムは蠍座に太陽・金星のコンジャンクションを持っています。アドルフ・ヒトラーの太陽・水星のコンジャンクションは、まさにディセンダント上にあります。法王ヨハネパウロII世は、9ハウスに水星・金星のコンジャンクションを持っています。上述のモニカ・ルインスキーや故ダイアナ妃の例も再考してみてください。逆行はその天体の「姿勢」を複雑なものにしがちだと言えるでしょう。

逆行の火星は、物事を成し遂げるための活力が「表出する」前に「内向する」ことを推測させます。この火星は反省(熟考)、編集、検閲、調節、戦略化のために内向します。サダム・フセインは、射手座の月とコンジャンクションの逆行火星を持っています。法王ヨハネパウロII世は、9ハウスを支配する逆行火星の持ち主です。

木星の逆行は、内面が堅牢な機略にたけていること、そして自身の能力に満足し、孤立することで利益を得る暗示です。自己の内面がもたらす報酬を得ることがたやすく、また得たものは振舞いを成長(発展)させるために重要となるでしょう。それは必ずしも宗教的、霊的次元を示すというわけでなく、「気付き」の実用的かつ哲学的な構築であることが多いでしょう。 主要な例として、ダスティン・ホフマンは11ハウスを支配する逆行木星をアセンダント付近に持っています。偉大な野球選手で公民権運動の象徴であるジャッキー・ロビンソンは、5ハウス支配の逆行木星を持っています。

私見ですが、土星の逆行はおそらく、社会科学的に把握された人間の挙動の外的表示のうち最も洞察的な扉ではないかと思います。 土星の逆行は、親との関係性抜きに語れない人生初期の家庭環境の中で、身に染み付いた劣等感の遺産を暗示します。片方の親、もしくは両親ともに、信頼できる(愛情深い)親子関係を子供の成長過程で築けず、むしろその邪魔をした可能性があります。逆行土星は、解釈において細心の注意を払うべき非常に重要な表示です [著書「Synthesis & Counseling in Astrology」は、25年(以上の)間に検証した数千のケーススタディを豊富に展開し、この命題を補強した専門書です。特に35〜49頁を参照ください]。− 故ダイアナ妃、マリリン・モンロー、エリザベス・クイーンII世、ベティー・フォード(火星、木星、土星がすべて逆行しています)、ダスティン・ホフマン、ジャッキー・ロビンソンなどの例は、逆行土星の研究に非常に重要です。

A Shift of Observations
「観点」の変更

天王星、海王星、冥王星にももちろん逆行期間がありますが、「トランスサタニアンの逆行」が真に意味を持つとすれば、その意味を把握するのは簡単なことではありません。

およそ30年前「半球の強調」(個人の心理力学的「第一印象」と相関する強調)の論文を展開した時、 3つもしくはそれ以上の逆行天体の複合が、ほぼ常にホロスコープ上の同じ半球に集まる傾向にあることに私は気付きました。この発見は、逆行天体が集合する半球の対極の半球に強調が見られ、そちらの半球が優勢となる傾向に注目した、私の「半球の強調」の分析アプローチにへと発展しました。

東半球の強調がある場合、心理的成長過程(発展)において、防衛守勢が浸透することが予期できます。北半球の強調(地平線下)では 人生初期の家庭環境に起因する未決案件の存在を、西半球の強調であれば自分自身を他者に捧げてしまう傾向を読み取ることができます。南半球の強調では、他者にこき使われたり、犠牲になる可能性があります。非常に明確なこれらの推論の背後には、打ち消しがたい強力な理由があります。このウェブサイトでもその(理由の)一部を扱っています(アーカイブ 1999/7/15の記事を参照ください)。また、著書「Synthesis & Counseling in Astrology」の5〜34頁には特に詳細な記述があります。ぜひ参照ください。

したがって、外惑星の逆行は、「半球の強調」のバランスに関する観点の決定や、個々の半球の強調の傾向の評価において重要な意味を持ちます。これは、分析のさらなる発展の基盤を確立する強力な表示です。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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