困難な天体配置の補完作用
Tyl HP Analytical Techniques 2004 Aug 31
私たちは皆、矛盾した天体配置は困難を伴うことを知っています。困難の克服の手引となる法則はありませんが、助けになる考え方はあります。
夜は昼を否定するものでしょうか。それとも２つの間には補完性があり、一方が他方をより明確にし扱いやすくするでしょうか。
音は静寂を台無しにするものでしょうか。それとも一方が他方をより意味深く明白な、価値あるものにするでしょうか。
天体配置の矛盾を矛盾としてではなく、「補完」と見る考え方があります。つまり、１つか２つの天体配置が、矛盾する強力な天体配置の埋め合わせをするということです。ここではこの「補完」の観点で、矛盾する配置を相互により価値あるものにしていく代償作用や均衡に関する分析についてお話します。
逆行土星の理論を確立する30年以上の研究過程において、仮説が一見成立しないように見えるケースや、仮説に到達すること自体が難しいケースなど、理論そのものを否定するような例がいくつもありました。タイガー・ウッズのホロスコープ（1975年12月30日 午後12時50分 PSTカリフォルニア州ロングビーチ生）の逆行土星の働きもその一例です。
タイガー・ウッズ
タイガー・ウッズは父親により、ほぼ強制的にプロゴルファーになるべく育てられました。マイクダグラスショーというテレビ番組で、２歳半のタイガーウッズがゴルフボールを打つ驚くべき映像が放映されました。連日連夜、この父親は息子の成長を通し、ゴルフ技術の指導者として衆目を集めました。素晴らしい親心です！ ..いえ、本当にそうでしょうか。それがすべてでしょうか。１つの物事への過度の集中は、何か他の関係性における問題が原因となっていないでしょうか。父親との強烈な関係を本人がどう感じていたかについては、もちろん直接彼に確認しなければなりません。タイガー・ウッズの逆行の土星は水星（ＭＣとアセンダントの支配星）とオポジションを形成しています。
**しかし、父子関係はとてもうまく行っているように見えます。タイガーと父親は同じ強迫観念を共有しているように思えます。逆行土星の影響を埋め合わせる何かがあるのではないかと探してみると、やはりありました。タイガーの土星と太陽はミューチュアルレセプション（天体の互換性と強さを常に増進する配置）になっており、太陽はＭＣ（親と職業を表すアングル）と正確にクインデチレ（彼のホロスコープの中で最も正確なアスペクトです）になっています。
これは、分析の際に注目すべき「補完」の配置の一例です。
ジャクリーン・ケネディー・オナシス
ジャクリーン・ケネディー・オナシス（1929年07月28日 午後02時30分 EDTニューヨーク州サザンプトン生）のチャートには顕著な逆行土星があり、彼女の父親問題と結婚へのその投影はよく知られ、色々な書物にも記されています。彼女の逆行土星は２ハウスにあり、７ハウスを支配する金星とオポジションになっています。しかし、深刻な父親問題の「代償作用」が物質的安定や地位の強化（強力な獅子座の太陽）の方向に働き、自己のバランスを保つ構図がそこにあるのではないでしょうか。彼女の土星は、牡羊座の月や獅子座の海王星-ＭＣと火のグランドトラインを形成しています。エゴを巻き込んだ強大な、まさしく王のような防衛メカニズムです。
オードリー・ヘップバーン
感受性がとても強く、キュートで「妻にしたい女優」などと言われるオードリー・ヘップバーン（1929年05月04日 午前03時00分 GMDベルギー・ブリュッセル生）は、第二次世界大戦初期の大変気の毒な家族環境から立ち上がり、世界で最も愛される映画スターの１人になりました。彼女のホロスコープでは、冥王星とクインデチレになっている逆行土星（牡羊ポイントの山羊座０度）が支配的に働いています。
しかし、この逆行土星の特徴を補い、埋め合わせをする天体配置が存在します。アセンダントの支配星でペレグリン（ノーアスペクト）の天王星が太陽と月のミッドポイントにあることや、ＭＣ=木星/冥王星がそうです。この天体配置に「後退」の特徴は全くありません。
ここで明らかになる点は、逆行土星の影響が消えたり失われたりするわけではないということです。逆行土星の影響自体はそのまま存在し、その周辺の資質を活性化させる他のいくつかの天体配置の影響と結び付いているのです。これにはしばしば天王星が関係しており、逃走の力や大胆さで個性を強調、再建しています。
ルチアノ・パバロッティ
例えば、ルチアノ・パバロッティ（1935年10月12日 午前01時40分 CETイタリア・モデナ生）のホロスコープを見てください。逆行土星はＭＣを支配する金星とオポジションになっています。そして天王星は、アセンダントの支配星である天秤座の太陽とクインデチレになっています。さらに、天王星=太陽/木星の配置もあります。
ブルック・シールズ
ブルック・シールズ（1965年05月31日 午後01時40分 EDTニューヨーク州マンハッタン生）のホロスコープでは、９ハウスを支配する金星が火星とスクエアを形成し、教育が中断される高い可能性を示しています。しかし、彼女は他の映画スターがほとんど達成できないような偉業を成し遂げました。ブルック・シールズは就学を中断することなくプリンセトン大学を優等生として卒業したのです。金星の問題（教育の中断）を補完する主要な表示は９ハウスにあるペレグリンの水星であり、双子座には太陽、月、木星、金星の４天体も入り、水星が強調されています。
ティモシー・リアリー
フラワーチャイルド（反戦平和を主張するヒッピーたち）の「信念」であり、ＬＳＤのグルであるハーバード大学の心理学者ティモシー・リアリー（1920年10月22日午前10時45分 EDTマサチューセッツ州スプリングフィールド生）は、月-天王星とトラインを形成する太陽に支配された素晴らしい９ハウスを持っています。彼の海王星はペレグリンです。教育学者である彼の投獄（彼の思想弾圧を目的とした、軽い罪状での投獄であったため「イデオロギーの囚人」とも言れています）は、彼の研究テーマのひとつである薬物に起因する成功を彼にもたらしたのではないでしょうか。
これらの所見は、土星の逆行や重要な成長領域（ハウス）のルーラーシップといった偉大な分析概念を否定するものではありません。むしろ解釈の過程で、矛盾する天体配置の苦境から抜け出そうとする個人の成長の力強さの統合体とでも言うべきものに対し、深い関心を持たせるものです。今日世界で最も才能があり、刺激的な俳優であるダスティン・ホフマンやロバート・デニーロのような内向的性格の人物の人生における補完作用の働きをぜひ想像してみてください。
私たちはここで新たな法則に注目しているわけではありません。個々のホロスコープが奏でる音楽をよく聴く助けとなる考え方の枠組みを理解しようとしているのです。才能のある占星家は、いかなるホロスコープのいかなる天体配置もクライアントの実人生に照応させていく術を最終的に身に付けます。それが私たちの芸術なのです。
（訳：石塚隆一 校正：石塚三幸）