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月がつくる差異:職業のプロフィールづくり

Tyl HP Analytical Techniques, 30 April 2006


今回のコラムでは、原理が実際に機能している2つの例を示します。この2つの例では、月が明確で雄弁な「変数」となっています。

例のうち1つは私のものです。私のホロスコープを用意してください(「Vocations」の10ページ、「Synthesis & Counseling in Astrology」の310ページを参照。ノエル・ティル:1936年12月31日 午後3時57分 ESTペンシルバニア州ウエストチェスター生)。

2重(ダブルボディー)サインの私のMC(複数の仕事、あるいは職業における困惑)が示す、私がたどる職業の道筋の拡張過程はとてもシンプルです。海王星→水星→土星→海王星→水星 というディスポジターの流れは繰り返し(すなわち重要な)ループを形成しており、特に水星は冥王星や火星と劇的に接触しています。こうして私たちは8ハウスの水星へと導かれます。

水星は職業プロフィールづくりの過程に「コミュニケーション」というテーマを強力に加え、接触する冥王星は「分析」を加えます。3ハウスのチェックが必要ですが、その3ハウスでは月のテーマが見つかります。劇的なコミュニケーションに関するテーマが再度強調されています。

もし、この獅子座の月からホロスコープ分析にとりかかる場合には、ディスポジターの流れは 月→太陽→土星→海王星→水星 となることに注目してください。コミュニケーションのハウスにある強力な月のディスポジターの太陽は3ハウスを支配しています。太陽のディスポジターに注目すると、ここでも 土星→海王星→水星 のループが繰り返さています。

ここで述べたいことは、このホロスコープが象徴する適性に、公に対する劇的なコミュニケーション能力が含まれるということです。3ハウスから派生するループとの共同のアンカーポジション(到達点)として8ハウスがあげられます。その理由は、水星が8ハウスに在住し、水星のディスポジターの土星が8ハウスの支配星であり、MCの支配星である海王星と接触しているからです。民間療法や分析、探偵業などの分野における劇的なコミュニケーションのイメージが得られます。−いわゆる占星家の度数域[柔軟サインの17度と獅子座26度] が活性化 [土星と月により強調] されており、占星術が職業の方向性として大きくクローズアップされることがわかります。

占星家としての仕事(以前の職業はオペラ歌手であり、劇的なコミュニケーションの表現は芸術的レベルで行なわれていました。MCの支配星である海王星が鍵となっています)の中で、私は非常に多くのテキストを執筆しており、著書の多さはおそらく占星術史の中でも比類ないのではないかと思います。すべては適合しています。私は占星術を衝撃や演劇性を持って伝え、あるいは教え、変化する人類の状況に合わせて分析技術を現代化しています。私は占星術の技術をセラピー的な道具として利用することを強調しています。

比較のために、ぜひ2つ目のホロスコープを見てください。男性:1942年12月05日 午後7時30分 EWTニュージャージー州プレインフィールド生

2つのホロスコープの各ハウスカスプはほとんど同じサイン位置になっています(インターセプト軸の位置のみが異なります)。

魚座のMCなので、職業プロフィールをたどる道筋は海王星から始めます(海王星は牡羊ポイントという目立ちやすい配置にあり、また太陽・水星・金星とクインタイルで接触しているため、理想主義的な傾向も加わっています)。ディスポジターの流れは 海王星→金星→木星→月。蠍座の月は冥王星に支配され、さらにその冥王星とアスペクトを形成しています。冥王星はMCとも接触しています。これは原動力たる月を通した重要なテーマの表示です。知る欲求、知ることによるコントロール、研究により蓄積された知識、また何らかの形で芸術的、精神的に補強されているものなどが重要視されます。

冥王星に支配されアスペクトも受けている蠍座の月は、調査や研究を重要なテーマとして取り上げることを示します。月がアセンダントを支配していることから、MCの拡張過程の中で、知ること、知識によるコントロール、研究の完遂、情熱的な知識欲などを個人として追求していくイメージを重視する傾向が推測できます。月は5ハウスにあり、5ハウスを支配する金星がMCと接触していることから、研究成果は教育的な方向性へと変わっていくことが望ましいのは疑いないでしょう。

しかし、題材は何がよいでしょうか。

MCの支配星である海王星は天王星と密に接触しており、天王星は土星とコンジャンクションです。この天王星と土星のコンジャンクション(新と旧、前衛と伝統、革新と保守の対決あるいは改善)は、天王星を通して8ハウスや9ハウスを焦点にしています。これらのハウスは民間療法の方法論や高等教育(月などによりすでに確立されている「研究」の領域を考慮し選んでいます)などが考えられます。

冥王星とMCとの接触は派手に目立ちます。

天王星とコンジャンクションの土星が太陽と接触していることに注目しましょう。太陽はコミュニケーションをあらわす3ハウスの支配星であり、3ハウスには占星家の度数のノードが入っています。教育をあらわす5ハウスの支配星の金星は、冥王星とともにやはり占星家の度数にあります。この男性は占星術を伝達する(著述も含め)必要があるでしょう。彼は疑いなくそれを教え、高等教育や学術的な方法でそれを研究していくに違いありません。

これは、私たちの時代の偉大な占星術研究/歴史家であるロバート・ハンドのホロスコープです。

2つのホロスコープは同様の占星術の焦点を共有していますが、それぞれ個性的で劇的なやり方で追求しています。その追究の仕方は、月が物語っていると私は考えています。

私のホロスコープを見ると、2重サインのMCの支配星である海王星の象徴の範囲の中で、オペラ歌手という職業を通して、芸術的表現におけるコミュニケーションの方向性を見つけたことが理解できます。ハンドのホロスコープでは、私が思うにその領域(概念の世界である射手座在住の太陽・水星にクインタイルで、天王星とともに強化されているAP海王星)は精神世界の特別のジャンルであり、そこで表現をしていくことが想像できると思います。精神世界の調査、おそらく超自然的なものが対象になるでしょう。あくまでも私の考えですが、やはりハンドは何らかの形で思想の牧師になり、歴史的な知識を通して、自分自身(そして私たちすべて)のためにその莫大な知識欲を充足する必要があるのでしょう。

これらは私たちの月のドラマなのです。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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