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ハウスの「色彩」

Tyl HP Analytical Techniques 2007 Jan 31


新参占星術師は、意味・意義に熱中するあまり「あらゆる天体とその配置は、人生を特定する根本的な意味を示すはずだ」という考え方の罠にしばしば陥ります。しかし時が経つにつれ、実際はそうでないことが明確になってきます。数あるハウスシステムのカスプラインのような境界線が頭の中に見当たらないのと同様、宿命的な前兆の地図などは存在しません。宿命的なものに対する期待を緩和しつつ、私たちは統合を続け、「肖像」を出現させなければなりません。

ホロスコープの天体配置を見るにあたり、ある天体の象徴的な在り方を感じて生じる心地良さには「色彩」の概念が含まれます。肖像画家は、まさに自分の「色」をパレット上に展開します。美意識物理学的な何らかの法則により、心地良さと色彩の間に特別な関係性が確立していきます。あるハウスの「色(絵の具)」は、時に別のハウスへと浸透することがあります − 「波及効果」です。水中のトルコ石(宝石)色の原野に響く金切り声のオレンジ色や、黒いベッドの上のコバルトブルー。そんな不調和な強調もそこここに存在する可能性がありますが、つまるところ、それらはみな創造された統一体の中で共に働いています。

ホロスコープの解読において「色彩」を感じると、多くのことを学習できます。有意義なスタートはその先の分析を豊かなものにします。行き止まりの分析に囚われることなく、「肖像画」が想定に入るようになります。

例えば、天秤座の月・木星のコンジャンクションと共に(同サイン)ある海王星の配置により、ジョージ W. ブッシュの出生図の3ハウスはどんな色彩を帯びるでしょうか。3ハウスの月・木星の強力な配置は、公共通信と販促術に関連しています。そしてまさにこの場所が「抑圧」により濃紺色に染まります。情報・通信はことごとく回り道し、もみ消されます。しかし実際は、彼が望んでいるようなコミュニケーションを取るのは簡単なことではないでしょう。− なぜでしょうか。


ジョージ W. ブッシュ [1946年7月6日 午前7時26分 EDT in New Haven CT]

日頃私は、勘で「夕食に誰が来るか分かるよ!」などと言ったりしますが、上記の「感じ」は瞬時に得る感覚として充分です。

ブッシュの太陽は12ハウスにあり、12ハウスの支配星は月です。この「色彩」は3ハウス海王星の強調と反響してはいないでしょうか。 舞台裏での数々の「抑圧」を私たちは目にします。彼のアセンダント支配星の太陽は、彼の個性開発における関心の核心と言えます。自己拡大(金星も獅子座のアセンダント付近にあります)する太陽は明るいオレンジ色に輝き、この色はコミュニケーション(3ハウス)での個人的表現の在り方に波及しています。以前にも述べましたが、水星と冥王星は暗鬱なブルーから這い上がり光り輝こうとしています。

そうです、これは新しい「システム」の話ではありません。ホロスコープの特徴を識別する鍵のように厳格に捉えるべきではないのです。これはシンプルかつ劇的に天体配置を評価する、ハウスに基づく豊富な分析的手法の中の、ひとつの非技術系手法です。(ホロスコープの主が)誰であるかに関わらず、「色彩」は何かを私たちに伝えます。

トム・ブロコウの出生図 には、とりわけ強い火星−土星(火星はアングルの支配星で自分の支配するサインに在住しファイナルディスポジターとなっています)の4ハウスの「色彩」があります。火星−土星の強いコンタクトは努力、ハードワーク、責任、仕事を完遂しようとする姿勢、などの色を常に帯びます。この4ハウスを見ると、彼の建てる家は彼自身への報酬(同室の牡羊座の木星にも注目してください)のように感じませんか? この男性は、自身の言動のすべてにおいて強く、責任感にあふれ勤勉で、「根源」への接触を指向する、といった色を放散しています。またその色は彼の山羊座の月へと明確に波及しています。この「色彩」は彼の実人生によく反映されているでしょう。


トム・ブロコウの出生図 [1940年2月6日 午前3時40分 CST in Webster SD]

著名な作曲家バート・バカラックの出生図 は、7ハウスに強い「色彩」があります。柔らかく芸術的、抑圧的で慎み深く、曖昧で距離感のある印象です。その「色彩」が、ファイナルディスポジターの双子座の水星やMC支配の牡羊座の木星へと波及している点が明確になるまでは、この印象だけで充分です。実際、職業面における彼の審美的で自由な表現の希求に焦点を当てることができれば充分でしょう。金星にも注目してください。金星もファイナルディスポジターであり、その色はライジング(12ハウス在住)の月へと波及し、海王星の提示する色調と反響しています。これらすべてがバカラックのスタイルなのです。


バート・バカラック [1928年5月12日 午前1時15分 CST in Kansas City MO]

・・・「色彩」を見るこの方法は簡単に取り入れることができます。多くの占星術師が克服すべき困難は、ホロスコープから見て取れるものを言葉にする際に確信が持てないという点です。自分の伝えたいことについて怖れる必要は少しもありません。大切なのはいかに慎み深くそれを伝えるかです。


ジム・ベーカー [1940年1月2日 午前11時0分 EST in Muskegon Heights MI]

テレビ宗教家ジム・ベーカーの出生図には、バカラックと共通の色彩が多く存在します。アンギュラーの海王星が7ハウス(色彩をイメージしてみてください)にあり、アスペクトを介して木星や水星に海王星色が波及しています。ベーカーという人物を私たちは知っているので、まずは宗教的要素を探しますが、2ハウスの土星、つまり金銭に関する野心の色彩にも注目しましょう。2人とも、2ハウス天王星の明るいオレンジ色を持っています。「私って素晴らしいでしょう..?」という独特の価値観の一側面が彼らを突き動かしている可能性があります。ベーカーの天王星はノーアスペクトで野生的・発散的です。この天王星の「色彩」は、土星の野心の「色彩」にどんな影響を与えるでしょうか。バカラックとベーカー、それぞれのパレット(ここでは2ハウス)上の色彩の違いに注目してみてください。


ステフィ・グラフ

引退したプロテニス選手 ステフィ・グラフの出生図には、12ハウスの太陽・月や水星(ファイナルディスポジター)による距離感の色彩が存在します。この天体グループは、自己抑制や自己満足の色調を持ちます。ただ、この静かな内向性の色彩は、ともかくも非常に明確に、心地よく5ハウス乙女座の天体グループと混ざり合います。MCに対する海王星スクエアの色彩は、この出現しつつある「肖像画」と反響しています。この偉大なスポーツチャンピオンは一体「誰」であり、「どこに」いるのでしょうか? 彼女はそんな自分自身をどう感じているのでしょう? そこからいつ脱出するのでしょう? 新たな「色彩」はいつ輝き出すでしょうか?

・・・どうです、魅惑的だと思いませんか ? ホロスコープのあらゆる場所(ハウス)で、最初の感覚を信じてください。「色彩」に注目し、注意点を1つか2つ書き留めてください。別のハウスを見る時も同様にしてください。そしてそれらの考えを統合しましょう。

もしすべてを彩りたいと思うのであれば(ぜひ行ってみてほしいのですが)、単純に 太陽のエネルギーの色を、月が支配する欲求の焦点に向けて波及させてみてください。ホロスコープから読み取れるあらゆることには、こういった色彩評価のプロセスが反映されていると言えます。欲求充足のプロセスと呼んでもよいでしょう。ジョージ・ブッシュのエネルギーが、社会的な相互作用を通して(利用して)安全を創造することにいかに焦点化されているか。「僕の言うことを信じてくれよ。今この過程では 僕が重要である必要があるんだ!」。彼の対人関係や社会的大義は、彼の「安全」についての意識が問われる重要な試金石になることでしょう。出生図の東半球の強調(すべての天体が東側にあります)を通して、それはどのように表面化するでしょうか。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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