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統合のためのブロックを組織化する

Tyl HP Analytical Techniques 2007 Mar 31


占星家は、分析のマジックを乗り越えるという試みにおそらく最も時間を使うのではないかと思います。難解で神秘的な占星術の装飾の中に織り込まれた呪文の本質を理解するのは非常に困難です。しかも実はそれは特別な何人かのための知識であり、彼らはその知識を議論するとき紫色のローブを身にまとうのです..!

自分が把握し得るすべてを分析することは、学んだことを実践し天体間の力学に指針を見出す初期段階では重要なのですが、一方で「識別人」と揶揄されるような未熟な占星家の印にもなります。人間の成長や個性発揮に対する豊かな理解力が、記述的きまりによって破壊された結果そうなってしまうとも言えます。占星家を目指す者は、様々な球種を投げ分けることと、きっちりストライクを投げることとは全く主旨が異なるという点を認識しなければなりません。

パブロ・ピカソのホロスコープを見てみましょう。


パブロ・ピカソ [1881年10月25日 午後11時15分 Malaga, Spain]

「10ハウスに逆行天体が集中してる..!これは大変だ。」
 「でも待てよ、天体間のスクエアはない。ただ太陽と土星がアセンダントにスクエアだ。 ..そうだ、そう言えばこの天体配置を持つ男性を知ってる..!」
 「月とノース・ノードはコンジャンクション。 これはかなり特殊だ。」

..と、このような見方ではまだ何も分かっていないのと同じです。

ホロスコープの特異な点や珍しさ、独自性を探して指摘するのはいとも簡単なことです。それらの特徴を説明するために、同様のパターンや配置を持つケースを捜し求める(ちなみにそれはチャートの持ち主の独自性を損なうことにつながります)占星家をよく見受けます。そういった場合ほとんど深い考察や観察は尽くされず、占星術は見る見るうちに暗記した事柄に頼る当てものゲームへと化してしまいます。

−そうなると、成長・発展に関する望みにかげりが出てきます。

占星家のスキルアップの過程で、ホロスコープ解釈の「演出」の仕方を身に付けることによって得るものは非常に多いです。ところで、マスター認定コースのスピーディーで過酷なレッスンでは、原則に基づく知識を活用し、それらが社会的枠組みの中でどのように相互作用しているかを考慮しつつ実践を積んでいきます。占星家の誰もが用いるいくつかの手がかりをもとに、ピカソ他2名のホロスコープにおいて何が達成され得るかを考えてみましょう。(DVD〈ウェブサイトの「BOOK LIST」で紹介しています〉もご参照ください)

1. 人生初期の家庭環境における多くの未決案件の存在を示す 北半球の強調が目立っています。この見立てはどのホロスコープを読むにも主要な「鍵」となります。この第一印象は、以降に展開する他の分析すべてに浸透します。

2. 未決案件の源には、土星の逆行(父親との関係性)と、自己価値観に影響する幼児期からのストレスとが複雑に絡んでいるものと思われます。[逆行土星は 両親を表すハウス(4/10)の中で太陽とオポジションを形成しています。太陽は自己価値観を表す2ハウスの支配星です] −このコンプレックスに関連して現れる社会的パターンは確立しており、よく知られています。

3. おそらくは父親が視界に入らないか、軽蔑しているか、もしくは父親の存在そのものが欠落しているために、女性、母性的な影響力が優勢でしょう。[月はノード軸にコンジャンクションです。「ノースノードとサウスノード」の違いに言及すると、的外れの議論に熱中したり、違い自体が最大の関心事となる結果を招きがちです]

4. 女性が支配する環境でしつけられ形成された思考パターン[大人になっても変わらず継続していることが検証できます]は、愛されることに困難を感じ、鬱病的にもなり得るものです。[3ハウスと11ハウスを支配する水星に対し、冥王星がオポジションです]

5. 強力な基盤をもとに、哲学的な好奇心を自慢げに振りかざしつつ、自身の地位を切り開くため知識と評価を利用しつつ、そして人生の目的を実現させつつ、上記のような成長過程のフィルターを通して発展の努力を続け、物事が揺るぎなく存在する理由を探求していくでしょう。(アセンダントルーラーは蠍座の太陽です。(本能的な)欲求は射手座の月で示されます。そして誇らしげで機略に富む木星−冥王星のコンジャンクションがあります)

分析の統合を系統立てる第一段階としてはこれで充分です。訓練を積みボキャブラリーを使えば、30〜60秒間で本質を捉え表現することが可能です。占星家は、明確に区分され広く認知された社会的発展のパターンの範囲内からチャートの持ち主のポジションを捜し出していきます。

次のステップでは、より多くの解釈を一気に提示できます。例えばミッドポイントを使います。MH(ミッドヘブン(MC))=金星/海王星、ASC=海王星/MH、ASC=太陽/土星、海王星=太陽/冥王星、木星=金星/火星で、すべては当人の基本的な人物像を反映しています。さらに職業的側面の方向性を見ます。火星と金星はMCを共同支配(10ハウスカスプが牡羊、牡牛がインターセプト)しています。火星・月・木星・金星*(・はディスポジター、*はファイナルディスポジターを表します)。MH=金星/海王星。これらは「教訓的芸術」による芸術的コミュニケーションを示します。

彼が軽蔑していた芸術家の父が作った「家族(5人の女性との共棲)」から、ピカソという人物が出現したということに、私たちはここで気づきます。

最終的なステップでは、アングルや太陽・月に対するアーク、そして強力なトランジットによる成長過程の運気の流れを把握します。

分析に熟達した占星家ならば、ここまで把握する過程に25〜40分もあれば充分だと思います。

「自分とだいぶ違う」と感じたでしょうか?熟練した占星家は、顕著な表示に振り回されることなくそれを受け入れ組織化し、解釈を深めます。そしてクライアントの実人生の可能性の構造を展開します。こうして、ホロスコープは正確に、そして象徴的にその人生を映し出します。


ティモシー・リアリー[1920年10月22日 午前10時45分 Springfield MA]

もう1例見てみましょう。フラワーパワーで有名な、60〜70年代のハーバード大学の心理学講師 ティモシー・リアリーのホロスコープです。 あなたが(おそらく)よく知る興味深い事象や詳細分析探しは、ここではしないでください。

1. 南東の半球が明確に強調されています。−傷つきやすく、出来事や他人に利用されて自分(の存在価値)を見失い、世間にこき使われる可能性があります。この配置はおそらく「報復」のための自己防衛による過剰補償を必要とするでしょう。[リアリーは、家や大学などにおける規律の問題を常に抱えていました]

2. この太陽−月の組み合わせは、(人々を救うために)大変な社交的エネルギー使い、人道主義を主張する傾向を示します。そうすることで、自身がいかに立派で創造的(3つのクインタイルアスペクトがあります) であるかを定義するのです。

3. 特別な存在でありたいという、強烈で個性的(水瓶座の月)な欲求は天王星−月により激化します。しかしそれは海王星からのクインデチレアスペクトでカモフラージュされます(麻薬漬け、という彼の現実を知るポイントでもあります)。「特別」で「理想的」な存在でありたいという強迫観念があります [水星−金星が月−天王星とスクエア]。

4. 性的な側面は、8ハウスを支配する多忙な月と、5ハウス支配の火星(冥王星とオポジション)を通じての個人主義的な「運動」全般に見出せるでしょう。(12ハウス蠍座に水星−金星在住なども考慮します)

このくらいで充分です。 私が彼のカウンセリングをするとしたら「あなたがどんなふうに人々を助け、その行為があなた自身のどんな救いになっているか教えてください」と最初に尋ねると思います。彼はその質問をきっと気に入ってくれるでしょう。そして、アルコール、セックス、ドラッグなどの過剰により事態がいかに歪んでしまったか、にまで会話は発展するのではないかと思います。

[注 : リアリーは前立腺がんで亡くなりました。 出生図における12ハウスルーラーの冥王星と火星のオポジションは、その傾向を明確に示しています。 私の著書「The Astrological Timing of Critical Illness」を参照してください]


オノ・ヨーコ [1933年2月18日 午後8時30分 東京生まれ]

もう1例挙げましょう。これはジョン・レノンの未亡人 オノ・ヨーコのホロスコープです。

1. 半球の強調は、北と西です。人生初期の家庭環境における未決の案件は、自身の独自性(ノーアスペクトの水瓶座太陽)を確立すべく、世間に対して自己を強烈にアピールする傾向を作ります。彼女は状況に応じて違う自分を演出します。

2. ノーアスペクトの太陽は11ハウスルーラーです。愛らしくあることへの強い関心は、彼女の人格形成全体に浸透しているはずです(ノーアスペクトの天体は通常、支配するハウスが示す事柄でホロスコープを牽引します)。他者に対して影響力ある(世の中で重視されるような)発言をしたい欲求を持ちます(3ハウス山羊座の月は、水星・火星とスクエアです)。

3. 上記のような成長過程において、性的な事柄に関する深い苦悩の暗示があります。幼い頃から受ける制限的な教えと、実体験への切迫する欲求との衝突です。(5ハウスルーラーの天王星は、冥王星からスクエアアスペクトを受けています。冥王星が自己価値観の2ハウスを支配していることに注目してください。8ハウスルーラーの金星は土星とコンジャンクションです。)

4. 母親の役割については慎重に検討する必要があります。アセンダントルーラーの土星、4ハウスルーラーの金星、そして水星がノード軸にコンジャンクションしています。

これで充分です。これ以上の事前準備は、カウンセリングに際してクライアントに伝えられることが何もない、という占星家の怖れを表しているに過ぎません。

−−各ホロスコープの統合組織化のポイントですが、成長過程の体験を暗示するあらゆる手がかりのブロックから全体像を形成していくことが重要です。ここで大事なのは、分析の断片の余剰部分に気を取られることなく分析の工程を進める、という点です。創造的脈絡により、ポイントは連結します。それは筋の通った会話をする支えとなります。

さらなる解釈過程として、アークとトランジットから成長過程の時節を編成していきます。それにより、当該時期にクライアントの価値観がどのように形成された(される)かを私たちは学びます。ピカソ7歳の時、太陽=土星と MH=太陽ができています。これは彼が父親との距離感に気づいた頃ではないでしょうか。13歳の時 海王星=冥王星ができます。最も初期の作品に見られる深い霊的な感性が、この頃どのように生まれたかを想像してみましょう。23歳(火星=アセンダント)では、怒りと反逆のテーマが見られます。

ティモシー・リアリーのケース:火星=冥王星と土星=MH から、6歳〜9歳が特別な時期であることに注目しましょう(父親に見棄てられるかもしれないという家族間の緊張状態)。そして、彼のカリスマ性に気づいた人々と親しく接触し、愛らしさ問題に関する何らかの早熟な決断をするのが10歳〜11歳です。この時、天王星=木星(木星はアセンダントルーラー)、金星=アセンダントです。

オノ・ヨーコのケース:12歳の時に、MH=冥王星 です。家庭環境と教育において特権的で裕福な生活は、父の収監により母親が支配的となった家庭での極貧生活へと大きく変化しました(1945年3月、第二次世界大戦により)。その後20歳で、土星=太陽 ができます。最高級のアバンギャルドファッションに身を包み、ニューヨークで芸術の仕事を始めた頃です[ 太陽は9ハウスの支配星です ]。23歳(破綻ののち復縁した最初の結婚の頃)の時には、トランジットの冥王星が太陽にオポジションになりました。

−さまざまな推論を、意義ある全体論的な概念の中に系統立てるため、このエッセイを捧げます。最良の方法であなたの考えを働かせるシステム「統合技術」があります。それは、占星術の重要性を確実に人々に伝える道へとあなたを導き、占星家としての最高の力を引き出してくれるでしょう。

[さらなる学習のために:拙著「Synthesis & Counseling in Astrology」「The Creative Astrologer」「Solar Arcs」、そして、「15 Indispensable Keys to Analysis」と「the Magic of Solar Arcs」の2枚のDVDを参考にしてください。]

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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