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アセンダント−天王星と「早熟」(Ascendancy of the Precocious)

Tyl HP Analytical Techniques, 30 April 2007


個人主義的に発達を遂げ、独自の生産性で世界に過剰にインパクトを与える人物に対し、社会は「天才」のラベルを貼ります。「天才」と呼ばれるような人物の才能の片鱗は、必然的に人生早期に現れます。「天才」であることが早いうちに明確になるのです。

「早熟(precociousness)」(語源はラテン語の「praecox=早熟」)を目にしたり体感することは、私たちを魅了します。なぜなら、「早熟」は私たちのような普通の人間の予想を超えていて、平凡な日常から脱出させてくれるものだからです。複雑で不可思議な人間の驚異を生き生きと表現する、真に特別なものを私たちは見ています。この「特別なもの」は、超個性化に大きな役割を果たすのは天王星ではないか、という予想に私たちを導きます。さらに天王星とアセンダントとの関係も考慮に入るでしょう。−何冊かの古い教科書では、天王星とアセンダントの接触は「天才」と記されています。・・ですが、「専門化」や「早熟」という表現のほうが、規準としてより良い選択でしょう。明確に感覚をつかむため、いくつかの極端な例を見ていきましょう。

「早熟」や「天才」について、音楽史における何人かの作曲家のプロフィールに鮮やかで揺るぎない例が確立されています。彼らのホロスコープとその人生には学ぶところがあります。


ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト

私たちが尊敬する最初の作曲家は ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトです [1756年1月27日 午後8時 LMT in Salzburg, Austria]。モーツァルトの驚くべき早期才能開花と天才的作曲力は非常によく知られています。よもや、複数の天王星がアセンダントにアスペクトしているのではないかと思いたくなるほどです。さて、2つの表示が彼の天才性を充分に物語っています。天王星はちょうどディセンダント上にあり(アセンダントと180度)、ノード軸とコンジャンクションしています。これは、大衆から見て特別に個性的な、強大な存在表現を約束するものです。そしてその強烈さは、冥王星(射手座の月と正確に0度)と天王星のスクエアによりさらに強調されています。モーツアルトは、人々に伝えるべき莫大な「何か」を持っていたものと思われます。[歴史家や伝記作家は、モーツァルトは、自我認識とその表現に向かわせる無意識からのダイレクトな導管(水路)を持っていたのではないか、と書いています。情報化時代となった今なお、毎日毎秒、モーツァルトの音楽が地球上のどこかで演奏されている事実がその証と言えるでしょう。]

モーツァルトは4歳にして、クラヴィア(ピアノの前身)のための作曲を何曲か始めました。6歳の時にはもう、聴衆や皇族のためのコンサートツアーで飛び回っていました。彼は目の前に置かれたどんな譜面も初見で弾くことができ、さらに即興変奏や移調までできました。 またソナタや交響曲を即座に作曲することも可能でした。..カバーが掛けられて鍵盤の見えないキーボードを使って、彼は6歳にしてこれらすべての偉業を成し遂げたのです..!

モーツァルトは、ドイツ語とイタリア語によるオペラを12曲、交響曲を50曲、ピアノコンチェルトを23曲、ヴァイオリンコンチェルトを7曲、そして、非常に多くの室内楽やコンサートアリア(演奏会用アリア)、教会向けの大規模な作品などを書き残しました。すべてに壮観なる独創性が表現されています。これらはわずか35年の生涯において成し遂げられました。

ここまでの解釈で、「早熟」に関する天王星の影響力と、天王星とアセンダントとの関係のニュアンスが掴めてきたと思います。モーツァルトのホロスコープは仮説にフィットするおあつらえ向きの例であり、超個性化のテーマへの興味を喚起します。占星術のガイドにより、モーツァルトの遺伝子プールや、その奇跡の人生の拡張部分について理解することができるでしょう。


カミーユ・サン=サーンス

「新しいモーツァルト」と呼ばれた カミーユ・サン・サーンス [1835年10月09日 午前7時 LMT in Paris France] もまた「音楽史上最恐の神童」です。−絶対音感の持ち主(モーツァルトもそうです)であった彼は、2歳でピアノで曲を弾いたと言われています。3歳になる前に読み書きができ、5歳でモーツァルトの「ドン・ジョバンニ」のオーケストラスコアを深く研究していました。7歳ではラテン語を読むことができました。

彼が作曲した楽曲はモーツアルトほど多くはありませんでしたが、彼の音楽は上品で技術的に完璧であるという定評がありました。しかしながら評論家達は同時に、表層的な一面や「強烈な形式尊重傾向」を彼の作品に見ていました。サン・サーンスは熱心な旅行者でもあり、自身の旅や音楽や哲学についての本を出版しました。リストは、サン・サーンスを世界で最も偉大なオルガン奏者と呼びました。彼の逸話はたくさんあります。

カミーユ・サン=サーンスのホロスコープでは、天王星は水瓶座(天王星のサイン)にあります。そして、アセンダントやアセンダント上の土星と強いトラインを形成しています。また、この土星とMCのスクエアにも注目してください。[「強烈な形式尊重傾向」の表示かもしれません] そして、9ハウスに在住し、6つの天体と複雑な天体配置を形成している木星の強大な重要性に、私たちは否応なく気づかされます。


フェリクス・メンデルスゾーン

フェリクス・メンデルスゾーン [1809年2月03日 午後8時 LMT in Hamburg Germany] もまた早咲きの天才です。音楽史家達は、メンデルスゾーン早期の創作曲中の最も有力な作品はモーツアルトをしのいだ、と述べています。 メンデルスゾーンは、16〜17歳の時 MC=AP、土星=ASC になります。学識と哲学的教養ある家庭に生まれた彼は「ブルジョアな天才」と呼ばれました。クールで高級なイメージです。彼は才気溢れるオーケストラ指揮者であり、偉大な作曲家であり、ピアニストであり、画家でもありました。個性に注目すると、彼のすべての作品には「控えめなロマン主義」や慎重さ、保守的な感覚という特徴があります[太陽/月=土星/海王星で、土星は金星とトライン]。 この多作の天才は38歳で亡くなりました。

ここで私たちの仮説に新しい天体配置の考察を加えましょう。 マイナーアスペクトのセプタイル(60度のセクスタイルより8度少ない52度)は、ほとんどの人(私も含め)が気にかけないアスペクトです。知名度のあるセミスクエアとセクスタイルとの間にあって、あまり重要な意味を持たず、ともすれば解釈の邪魔をしているのではないかと私はいつも考えていました。しかし、ここでメンデルスゾーンの天王星を改めて注意深く見てください。これはこの記事の焦点でもあります。−このホロスコープには、天王星−アセンダントのタイトなセプタイルがあります。このセプタイルは「早熟」に拍車をかけるとは考えられないでしょうか?


ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルは、音楽史におけるもうひとりの巨像でした。[1685年2月23日 午前5時45分 LMT, Halle Germany] ヘンデルの巨大な作曲力(彼はたった22日間でメサイアを作曲しました。..現代の熟練ミュージシャンが単にそれをコピーするだけでも、おそらく4ヶ月はかかるでしょう)が、便宜的で意欲的、そして実務実用的な調べを帯びていることは広く認識されていました(土星がセスキコードレートになっている山羊座のアセンダントに注目してください)。ヘンデルは成人後の人生のほとんどをイギリスで過ごしました(MC支配の木星と9ハウスルーラー冥王星とのスクエアに注目してください)。−天王星的「才覚」は、天王星とアセンダントのスクエアがもたらしています。彼は46曲のオペラ、30曲以上のオラトリオと壮大な聖歌、77曲のカンタータ、22曲のインストロメンタル・ソナタ、などを作曲しました。彼の作品(手書き譜面)は大英博物館に97巻収集されています。


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン


リヒャルト・ワーグナー

ベートーヴェン [1770年12月16日 午前11時03分 LMT Bonn Germany] のホロスコープでは、天王星はアセンダントにスクエアです。ワーグナー [1813年5月22日 午前4時11分 LMT in Leipzig Germany] の天王星はアセンダントにオポジションです。

面白いことに、上記のような途方もない著名人は苗字だけで知られています。彼らの個性と生産性はそれほど知れわたっています。

これは天王星の刺激についての考察です。天王星は遺伝子というプールの水に投げ込まれた熱い岩石です。その影響を受けてアセンダントが奮起し、実人生での天性(生来的才能)発揮へとつながります。

ランダムな例をさらにいくつか挙げます:アインシュタインの天王星はアセンダントにセプタイルです。フロイトの天王星はアセンダントとクインデチレ、ヒトラーの天王星はアセンダントにコンジャンクション、そしてロッシーニとゴッホとヨガナンダの天王星は、アセンダントにクインタイルです。また中国(国家チャート)の天王星はアセンダントにクインカンクス、アメリカ合衆国の天王星はアセンダントとコンジャンクションです..!

ノーマル(あえて言うなら)な私の天王星はアセンダントから55度を過ぎています。−やっかいなセプタイルも越えています。なので私は早熟の条件を満たしてはいません。確かに、私は早熟ではありませんでした。..背が高い?ええ。でも、天王星がアセンダントとセクスタイルのボビー・フィッシャーのような、風変わりな才能は持っていません。

あなたの天王星にはどんな連係があるでしょう。また私たちはそれをいかに追跡調査すべきでしょうか。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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