HOME > ESSAY > TECHNIQUES

ペレグリンのさらなる重要性(How Peregrination becomes important)

Tyl HP Analytical Techniques   August 31, 2007


ホロスコープ内でいかなる天体とも「トレミーのアスペクト(コンジャンクション、セクスタイル、スクエア、トライン、オポジション)」を持たない天体−「ペレグリン」については 皆さん明確に定義できることと思います(注:古典占星術で言うペレグリンとは異なり「ノーアスペクト」を指します)。

古典占星術のペレグリンはディグニティや減衰の状態、ファイナルディスポジターであるかどうかなどの基本的定義のもとに成り立つものであり、理論上の制限があるのは確かです。しかし個人的には、この理論は、より明確に状態を定義しようとするあまり、論点をうやむやにし、実用性を減少させるように思います。

古典におけるこれらの「制限」から脱却するために、私は「限界」に挑みました。なぜなら経験的に、この定義の変更がペレグリン天体の顕現イメージを変えないことが非常に明白だからです。「古典的なアスペクトがない」という状態は、ペレグリンの資格に充分足るものです。[著書「Synthesis & Counseling in Astrology」155〜190頁を参照ください]

「ペレグリン(Peregrine)」という単語が「横切る、通り抜ける、境界を越える(across, through, or beyond the border)」という意味のラテン語から来ていることは 周知の事実です。私たちが使う「pilgrim(巡礼者)」も、ラテン語の「peregrinus」の変形である「pelegrinus」から派生しています。ペレグリンは、相容れない異国のものという意味合いを有します。

これらは何を意味するでしょう? 「ペレグリン状態」から、私たちが学べることとは何でしょうか。

ペレグリンについて議論する際、私はいつも興味深いイメージを思い浮かべます。それというのは「ニューヨーク市にある国連」です。諸外国から来る国連代表者は、合衆国法を基本的に免除されています。例えば、国連代表の運転手、もしくはその家族が関わる轢き逃げ事件などが起こっても、おそらく処分は当該国の大使館(員)もしくは当事者の強制送還警告の発令(つまり、当事者は国連での職を失う)程度にとどまるでしょう。言い換えれば、国連参加者(関係者含む)には、極めて特殊な自由が与えられているということです。遠い祖国からの巡礼者をうやうやしくもてなす、といった対応です。

ペレグリンの天体はそんな状態にあります。「家(その天体が支配するサイン)から遠く離れて」おり、支配するハウスのテーマに関して注意を引こうと暴れたり、極端な行動をとったりするでしょう。これは「基盤」の問題を表します。例えば、7ハウスカスプのサインの支配星がペレグリンであれば、親密な関係が人生の発展において物議を醸すようなテーマとなり得るでしょう。

太陽か月がペレグリンであれば、その人の核心部分の成長(発展、開発)に焦点があると言えます。ペレグリンについて「自分は鎖につながれていないということを人生早期に経験的に理解する」という説明を私はよくします。必ずしも「一匹狼的」ではありませんが、他と同化しにくい傾向にあります。外界からよく理解されているとは感じにくく、彼らもまた外界を完全に理解してはいません。多くの場合、「そのような習性である」と言えるでしょう。体制に個性がうまく適合しない(浮いてしまう)ことに関するコンプレックスにもつながり得ます。太陽か月(もしくは両方)がペレグリンの人が、「異なるリズムで生きている」ことに私は注目しています。

ヒラリー・クリントンのホロスコープの9ハウスを支配する太陽はペレグリンです。この9ハウスは彼女の人生開発(発展)において非常に増強された領域です。ミア・ファローの5ハウス支配の太陽はペレグリンです。彼女の人生は子供に関する諸問題への取り組みに尽くされるでしょう。デイビッド・カッパーフィールドの太陽はペレグリンで、MCとスクエアを形成しています。

私の知人に元警部がいますが、彼は第二次世界大戦のロシア人陸軍士官の詳細なプロフィールをまるで百科事典のように記憶しています。おそらくは他の知識領域においても、同様の力を呈するでしょう。彼の彗星はペレグリンです..!− 統計値や記録に関する素晴らしい記憶力で有名なスポーツキャスター ハワード・コーセルや、エリン・サリバン(素晴らしい占星術作家であり、同時に分析家でもあります)も同じくペレグリンの水星を持っています。

ペレグリン天体の焦点は、ホロスコープの至るところに見受けられます。特にその天体が支配するハウスの領域における方向性の基盤を理解する手がかりとなります。
有名ロックギタリスト、ジミー・ヘンドリクスは、4ハウスルーラーの火星がペレグリンです。9歳で両親が離婚し、16歳で母親が亡くなりました。家庭生活でさらなる辛酸を舐めることがないように、との計らいで、彼はその後「霊感的な」祖母のもとへ送られました。これら4ハウス関連の出来事は、彼の成長(発展)にとって非常に強力なものでした。

性的なことに焦点を持つ反社会的ブロードキャスター、ハワード・スターンの木星はペレグリンで、8ハウスを支配し双子座在住です。

ミュージシャンであり作曲家で歌手、またテレビの番組司会者でもあり、ほかにも数多くの肩書きを持つマーブ・グリフィンの10ハウス支配の海王星はペレグリンです。− 知る限りにおいてはサダム・フセインもそうでした。

中華人民共和国は、12ハウス支配の土星がペレグリンです。

ヒュー・ヘフナー(実業家で雑誌「Playboy」の発刊者)のペレグリンの火星は水瓶座(大義を持った反社会派)にあり、さらにペレグリンの金星が魚座(美を欲する)にあります。

女王エリザベスU世のホロスコープでは、太陽、月、水星がすべてペレグリンです..!− 特に太陽と月は、彼女にとって公衆(国民)を示す7ハウスを支配しています。水星は5ハウス・8ハウスの支配星であり、継承や子孫の問題などにおける女王の強硬な焦点を明確に示しています。

私はこのペレグリン強調の概念について、さらに踏み込んで追究してみました。2天体がアスペクト(通常コンジャンクション)していて、かつホロスコープ内の他のいかなる天体ともアスペクトを形成していない場合には、この2天体は「ペレグリンアイランド」として機能します。焦点となるこのペレグリン・ペアの影響は、ホロスコープに顕著に浸透します。

性の法的権利に対する反逆者であり、フェミニストスポークスマンのグロリア・スタイネムは、水星−海王星がペレグリンアイランドを形成しています。水星は8ハウス、海王星は5ハウスの支配星です。

有名野球選手で、断罪されたギャンブラーでもあるピート・ローズは、太陽・金星のコンジャンクションがペレグリンアイランドを形成しています。太陽は5ハウス、金星は2・7両ハウスの支配星です。
----

**ペレグリン天体(アスペクトを持たない天体)がほかの天体の領域に整然と統合されていないことが、いかに、(例えば上記の例のように)轢き逃げを許したり、ペレグリンの特性を強調するか(その天体が支配するハウスの焦点に主に注目してください)について、改めて認識できることと思います。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


Essay < Page top <