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金星の特異性(Idiosyncrasies of Venus)

Tyl HP Analytical Techniques 9/30/07


金星は、多様な次元と方法で親密な対人関係の入り口へと導きます。各人の振る舞い(言動)を考える上で非常にデリケートな天体であると言えるでしょう。他者に対する感情や、世間を巻き込むような理想化された思考(=金星)を通して、私たちは人生に着手します。

私たちは金星を通して、自分が感情的に何者であるのか確認できる他者からの反応を求めます。もしその実相が貧弱で冷淡なものであったら、いささか心配の種となるかもしれません。しかし金星は、再調整や改善のきっかけにもなり得るでしょう。もし(金星の実相の)反響が増すようなら、金星は強化され、常識的な境界を容易に超越し、極端なアイデンティティが定義されるでしょう。

金星が双子座もしくは乙女座にあれば、社交力を頭脳的に重視するでしょう。感情が芽生える以前に、関係性のスタイルを意識しています。彼らはしばしば、自身の持つ感情よりも優れた感情論を展開することがあります。金星問題に関して、理性の管理力のほうが感覚中枢に勝っているのです。これは有効なこともありますが、多くの場合相手を苛立たせ、落胆させる空虚なものとなりがちです。

最近鑑たクライアントのホロスコープですが、金星・太陽・火星がコンジャンクションで7ハウス双子座にあり、MCの天王星?_冥王星とスクエアを形成しています。かなり支配的な天体配置です。理想化した期待を抱き、5天体が感情を「思考する」ことに焦点を当てています。金星は11ハウスを支配し(一連の天体配置による)あらゆる緊張の中にあります。彼が心の問題に理性で対処しようとするのは、言わば愛される存在でありたいと熱望するため、と分かります。おそらく彼は「効率」を重視し、金星にまつわる諸問題や欲求を理性によって管理するでしょう。

クライアントの青年はこのことを自ら認識し、カウンセリングの大半は上記のような考察の探究に費やされました。− 要は不安を認識し、客観化により距離を取る工夫ができるなら、他者との間の信頼感や互恵的な配慮の仕方を必要に応じて調整することで人生を豊かにできるということです。青年の今後の人生に期待できると思います。

ジャクリーン・ケネディ・オナシスは、ジョン・F・ケネディ同様、双子座の金星を持っています。


ジャクリーン・ケネディ・オナシス


ジョン・F・ケネディ

マーサ・スチュワートの金星は、7ハウス支配で乙女座在住金星の完璧な見本です。頭で考えること、距離を置きがちなことが、彼女の特徴として強く感じられるでしょう。− 女優のジュリー・アンドリュース、ルシル・ボール、ソフィア・ロレーンも同様の配置を持っています。


マーサ・スチュワート


ジュリー・アンドリュース


ルシル・ボール


ソフィア・ロレーン

金星が火のサイン(特に牡羊座)にあれば、男女共に気の多いところがあるでしょう。また、自身が印象的・魅力的に映っているかを確かめるために探りを入れます。 過去にはスキャンダルのあった福音伝道家ジミー・スワガートは、牡羊座の金星が火星とオポジションを形成し、このオポジション軸が冥王星とスクエア(金星-火星-冥王星のTスクエア)になっています。この配置が極端な方向に展開すれば、世間が当人に強烈に魅了されていることの証明のためには「何でもし放題」の姿勢すら顕現しかねません。


ジミー・スワガート

テレビスター、ロージー・オドネルの金星は、5・11ハウスを支配し、牡羊座在住でペレグリンです..!


ロージー・オドネル

高級娼家ザヴィエラ・ホランダーはどうでしょうか。彼女の金星はアセンダントルーラーであり、獅子座で冥王星とコンジャンクションしています。

ジョージ・W・ブッシュは、自分に対する想定内の皮肉を目の当たりにしてなお、(世間の)崇拝的な支持を期待するでしょう。コメディアンでテレビ司会者のジョニー・カーソンや、第34代アメリカ大統領ドワイト・アイゼンハワーについてはどうでしょうか。


ジョージ・W・ブッシュ

金星が山羊座にあると、親密な関係における感情表現に不可思議な「遅延」が見られるでしょう。表現を困難にしている何かがあります。− あるクライアントに他者との感情交換を信頼することについて話を振った時、彼女は「相手が本当は何を望んでいるのだろうかといつも穿った見方をしてしまうんです..!」と言いました。「信頼できない」ことを怖れ、他者を誠実でないと予期してしまうのは、彼女がこれまで常に傷ついてきたからでしょう。それはいつ、どのような場面で起こっていたのでしょうか。またそういった体験をどのように再構築したら、一時的な関係を繰り返す習慣から彼女は離脱できるでしょう。

ブロードキャスター、ハワード・スターンの金星は山羊座にあります(驚くにはあたりません)。女優のキャサリン・ヘップバーンや俳優リチャード・バートンもそうです。


ハワード・スターン


キャサリン・ヘップバーン


リチャード・バートン

不思議なことですが、金星が水瓶座にあると「広義の愛」に対する気付きや、他者の発展の手助けをすることに関して有望です。慈善家ジェリー・ルイス、マザー・テレサ、元テレビ伝道師でクリスチャン歌手 ジム&タミー・フェイ・ベイカー、ノエル・ティル(私です)の金星は水瓶座にあります。

「泣きたいので肩を貸してくれませんか」− 人間がどんなふうに繋がることができるかを示すこのセリフは、蟹座の金星の象意と言えるかもしれません。これはイスラエルやイラク国家のホロスコープに明確に示されています。著名人では女優ジュディ・ガーランド、第36代アメリカ大統領リンドン・ジョンソン、ピアニストでエンターテイナーのリベラーチェ、イタリア独裁首相ベニート・ムッソリーニ、実業家で不動産王ドナルド・トランプなどのホロスコープをぜひチェックしてみてください。

金星の逆行:これは金星にとって最も困難な生い立ちと言えます。この金星は極めて個人的かつ個性化しており、稀なものです。金星の逆行は、約20ヶ月毎に40〜47日間しか起こりません。

この逆行は、明快さの欠損という不可思議を添えます。対人関係において、率直でなく真意を表明しない傾向があります。親密な関係にまつわる「二義的問題」を有する可能性もあります。逆行金星の人の感情の中枢は、そう親しみやすいものではないでしょう。

逆行の金星の存在に気付いても、それを描写するのは容易ではありません。

かなり裕福なビジネスマンである私の友人は、親密な対人関係において明らかに、奇妙によそよそしくうわの空なところがあります。一体どこの星から来たのだろう、と思うような振る舞いです。これは比喩でも誇張でもありません。本当に風変わりなのです。− このケースでは、(異なっているのが)価値観であることは確かでしょう。魅力的なのは彼自身でしょうか、それとも彼の財産でしょうか?

コンドリーザ・ライス(米国務長官)の金星は9室と11室を支配し乙女座にあり、冥王星とスクエア(最大の関心事が感情問題であり、そのため常に感情を浪費する傾向にある)を形成しています。彼女によそよそしさを感じる人は実際います。彼女のピアニストとしてのスキルは、「一対一の感情交換の代用」としてのピアノを弾くことそのものに捧げられているように感じます。また、途中でさえぎられるまでいかに彼女が話を止めないかに注目してみてください。互譲のプロセスを要する関係性への配慮を忘れがちな一面が見受けられます。


コンドリーザ・ライス

ビジネス界の要人テッド・ターナーは逆行金星を持っています。彼の感情表現は、なにか乾き切っているような感じを受けます。おそらくは感情を「代弁」する何か(それは彼の獲得したもの等すべてかもしれません)があるのでしょう。彼の結婚に多くの感情問題が存在したことは周知の事実です。


テッド・ターナー

土星_天王星とスクエアを形成し、逆行しているモハメド・アリの金星は、ホロスコープ中の「水」の象意の欠乏と相まって強調されています。彼の行なったイスラム教の布教活動(型破りでなくマンツーマンでもない、大衆的宗教活動)は世の中と感情的に繋がる方法を示すものでした。彼の金星は水瓶座にあります。


モハメド・アリ

サダム・フセインの金星は牡羊座で逆行しています。自分にとって不可欠な「快」を利己的に立証する自我エネルギー焦点について考えてみてください。(かつての独裁者は)とんでもない「二義的問題」を抱えていたのです。

テレビ伝道師オラル・ロバーツ、歌手フリオ・イグレシアス、プロバスケットボール選手で実業家のマジック・ジョンソン、エディー・マーフィー、俳優で作家のピーター・ユスティノフ。彼らは皆、人を苛立たせかねない、一歩遠ざかるようなよそよそしい一面を(対人関係の)感情領域に持っています。

アドルフ・ヒトラーの極端さを例に挙げてみます。ファイナル・ディスポジターの逆行金星は火星と正確にコンジャンクションしており、この2天体は土星とスクエアです。金星はアセンダントと8ハウスを支配しています。ヒトラーのプライベートな感情世界に関する伝記や証拠文献は、彼の巨大なサディズム欲求とその実施について暴露しています。大衆に対し感情を高揚させ演説する際、彼はある性的テーマを恐れていました。また、彼には自殺した女性の友人がいます。


アドルフ・ヒトラー

逆行金星と天王星のコンジャンクションが牡牛座にあり、蠍座の月とオポジションを形成している男性の話をします。彼は自己承認のために性行動の開拓に熱中しています。「年間225人以上との性交渉」などと、人数の記録までつけています。彼は異性によって自己価値感を保っているのかもしれません。非常に強烈かつ明白な「二義的問題」です。

逆行金星が3ハウスを支配しているか、3ハウス在住であれば、解放への希求や自己分離感、あるいは当惑、また自分の恋愛に関する現実離れした設定などの固定思考の存在に気付かなければなりません。当人はたいてい慢性的なフラストレーションを感じています。

上記のような極端な逆行金星の例はともかくとして、私たちは日常的に かなりの年齢差や複雑な束縛要因など、親密な関係における顕著な珍しさ、時には陰謀や秘密さえ見聞きします。

逆行金星が、複雑なやりとりのパターンを通して作用していることが伝えられたかと思います。遊離・超然とした感じは、多くの場合(彼らにとって)標準です。

− こうしてみると、我々人間はなんとデリケートな存在なのだろうと改めて感じます。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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