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派生ハウス

Tyl HP Analytical Techniques 1999 Sep 25


最近あるクライアントから、母親が亡くなった知らせを突然受けたという連絡をいただきました。彼ポール(仮名)と私は定期的に連絡をとっており、最近彼のホロスコープの総合的な解釈を行ったばかりでした。彼は新しいビジネスを始めるところで、私たちはすべてを明確かつ詳細に計画し、最善と言えるビジネス戦略を立てました。

その時彼の母親に関する話は出ませんでした。ポールは母親が衰弱していることを全く知らず、話題に上らなかったのです。しかし彼女は亡くなってしまいました。今振り返って、この事実を予測し得たか、彼のホロスコープから母親の状態は予測し得たか、それは予測に入れるべきであったか、またこの出来事からどんな分析のテクニックを学べばよいか、ここで考えてみたいと思います。

私の経験においては、ホロスコープのすべての主要な天体配置(トランジットやプログレスなどを含む)について、あらゆる顕現の可能性を列挙することから得られるものは何もありませんでした。むしろそういったカタログ化は、ホロスコープ分析の真価、つまり進行している現実の解明や、成長のための具体的戦略、客観的推論の過程を台無しにしかねないものです。

占星術の派生ハウスの概念を利用すると、特定のハウスを新たなアセンダントとする(ある出生ホロスコープから新たなホロスコープを作る)ことによりハウス分析を拡張することができます。例えば孫との関係を調べるには9ハウスを見ます。それは子供の子供(5ハウスから5番目)が孫(9ハウス)だからです。孫とのコミュニケーションについては9ハウスから3番目の11ハウスで考えます。それは当人にとって、基本的な11ハウスの動的特性である「愛を受け取る、必要とする、期待する」ことに関する新たな重要な焦点になることでしょう。

10ハウスか4ハウス(親を示すハウス)から数えれば、地平線軸はまさに両親の子午線軸を表します。人生の初期(とりわけ家族の保護下にある時)を分析する際の見方としてこれは大切です。[Synthesis & Counseling in Astrology の268ページ以降を参照してください]

ポールのネイタルの海王星は4ハウスにあります。最近のカウンセリングで、トランジットの海王星が近い将来7ハウスカスプにコンジャンクションになることが分かりました。このアスペクトから予測される、彼の新しい投機的事業に関する様々な当惑や不合理な期待を、創造性や適切な見通しへと変えられるよう私たちは慎重に検討しました。

しかし(繰り返しになりますが、母親について触れたり案ずる様子は全くありませんでした)、7ハウスカスプが4ハウスから4番目であることを私たちは考慮するべきでした。ネイタルチャートの7ハウスカスプは、4ハウスで示される親にとっての「事の終わり」を示す古典的なゾーンです。トランジットの海王星はポールのネイタルの4ハウスからこの位置に来ました。彼のホロスコープは、母親の死という普通でない、当惑させるような出来事を反映したのです。

地平線軸を両親の子午線軸とする見方は、成人のチャートにも当てはまるようです。トランジットの海王星を通して、これらのアングルのアンテナは再びメッセージを伝えてきました。私たちは彼の母親の人生の終わりに遭遇しました。

この認識が確立されるとすぐに、急速に発展し重要な意味を持つと思われる別の天体配置に気づきました。ポールのソーラーアークの天王星はこの時アセンダントに正確にセミスクエアになっていました。これは彼が引き受けた新しいビジネスの一部を明確に示すものでもありますが、先に述べたようにアセンダントは母親(4ハウス)から10番目にあたり、天王星は7ハウス(母親のハウスから4番目)の支配星です。

もし彼が母親の身体の衰弱や、重篤な病状などについてカウンセリングの中で話題にしていたら、母親の死の可能性を示唆できたであろうことについて、私の心に一点の疑いもありません。上記のアンギュラーのコンタクトは私の意識が見逃さず、警告としてポールに伝えられただろうと思います。カウンセリングの中で、彼が母親について触れることはありませんでした。そして彼の母親は亡くなりました。

私たちが学ぶべきことは、常にクライアントの現状について質問することです。アングルへの重要なアスペクトに気づいたら「今、両親との関わりや両親に関する心配事がありますか?」と尋ねましょう。とても簡単なことですが「去る者日々に疎し」の言葉のように、職業における発展を図るカウンセリングの多忙に紛れて、かくも容易に見落とされてしまうことでもあります。

このコラムの読者の中には、獅子座の若い度数にアセンダントがあり、トランジットの海王星が7ハウスカスプに来ている(1999.9.25現在)方も多いと思いますが、あなたの母親または父親は亡くなられましたか?もしお亡くなりであれば、それは予期されたものでしたか。またもし今ご存命であれば、この海王星のトランジットのアングルへの接触が示す事柄について確認した時点では、親の死は間近に迫った問題ではなく、このタイミングでそれが起こる確率はとても低いものだったということをきちんと認識できますか。これは分析家が覚えておかなければならない重要な考慮事項です。

私たちはどんな時も、クライアントの「現実」と、それに基づく様々な事情や可能性をホロスコープに照応させるということを忘れてはなりません。そうすることで、私たちは天体を文字通り、そして比喩的に「蘇生」することができます。常にすべてをカバーできるというわけではありませんが、できるだけ慎重に仕事を進めなければなりません。

(訳:石塚隆一 校正:石塚三幸)


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